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第204話
「本当は不安でたまらない。夏目さんが起きるのかも、起きたあときっとすぐには一人じゃ何も出来ないから、志乃が付きっきりになってしまうんじゃないかとか、一人は嫌なのに一人になるんじゃないかって思ったり、また···俺が志乃から離れないといけないのかもしれないって考えると、苦しい」
間をあけることなく言葉を発したから息が苦しい。
「またってことは、一度離れたことがあるのね」
「···生きてる実感が湧かなかったから、もう二度とあんなの味わいたくない」
「辛かったのね。でも生きることを投げ出そうとしないでいてくれたのは凄く嬉しい。」
「···トラさんが、嬉しいの?」
「ええ。貴方に会うことができたから」
その言葉が嬉しくて、思わずふっと笑う。
こうして話している時間すら、寂しくて、志乃に会いたくて仕方が無い。
「志乃のことが好きなのに、志乃の力になってあげられない」
「···それは難しい問題ね」
「俺、こんなに人のことを好きになったのは初めてで···本当に···ああ、どうしよう。俺、どうしたらいいの」
「落ち着いて」
短い呼吸を何度も繰り返して、苦しくなる。
胸を押さえるとトラさんが背中を撫でてくれたけど、どうすればいいのかわからず、不安になる。
「志乃···志乃っ」
「ゆっくり呼吸しましょうね。大丈夫よ」
「···はぁ、んっ」
ゆっくりと呼吸できるようになって、床に倒れ込みそうになった俺を、トラさんはベッドに運んでくれた。
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