221 / 292
第221話 梓side
***
健人と初めて会った日から2日目の朝。
「ほらぁ、ちゃんと食べなあかんの。また残しとるやんかぁ」
「んぅ···眠たいから、食べれないの」
「食べさせたるから、噛んで飲み込み。わかった?」
「···わかった」
健人の家に転がり込んで、帰らないでいる。
借りた服は、志乃とは違って少し甘い匂い。
「はい、あーん」
「あー···」
咀嚼して飲み込む。少しずつお腹がいっぱいになって、残していたご飯が無くなる頃には満腹でお腹がはち切れそう。
「ぅ、お腹いっぱい···」
「それはええ事やな。ご馳走様したら···今日はどこか出掛けるか?それとも家おる?」
「···健人は何するの?」
「俺はお家で仕事。」
「仕事···何してるの?」
「小説書いてる」
手を合わせてご馳走様と言うと「いい子やね」と頭を撫でられた。
「小説?」
「そう。これでも作家やねん。」
「どんな本書いてるの?」
「んー···あ、こんなん」
本棚に置いていた本を1冊抜き取った健人。渡されたそれはすごく有名で、以前俺が読んでいたやつだった。
「これ···俺読んでた。凄く楽しくて、止まらなくて」
「へえ、嬉しいな。それも俺が書いたやつ」
「···健人のことなめてた」
「そんなん別になんでもええよ」
ケラケラ笑った健人が、俺の手から本を取る。
「2時間だけ仕事するから俺はそっちの部屋こもるけど、用があったら来てくれてええし、自由にしとき」
「···部屋こもっちゃうの」
「あれ、寂しい?」
馬鹿にしたみたいな顔をするから、そんな事ないと意地を張る。そうして顔を背けると、肩を掴まれぐいっと引かれて、気が付けば目の前に健人の顔があった。
「寂しかったらおいで」
「っ」
キスをされて、体温が高くなるのを感じる。
食器を洗いにキッチン行った健人の背中を見ながら、口元を手で覆った。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!