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第228話

「お前のそのヘタレなところが俺は大嫌いだ」 「···············」 「今日だって、迎えに行って何もせずに帰ってきたんだろうが」 冴島は怒ると怖い。目の前ですごい剣幕で話をする冴島に、何度も頷くことしかできない。 「これで梓君が井手上君を選んだらお前はまた怒るんだろ!?自分勝手すぎるんだよ、わかるか」 「···ああ」 「次はいつ行くつもりだ。その時には連れて帰ってこい。···いや、梓君が井手上君を選ぶなら連れてきたら可哀想だな。お前、そうなっても文句言うなよ。さっきも言ったけど自分勝手すぎるから」 「···それはわからん」 「ちっ、お前本当···腹立つな」 舌打ちまでされて、視線を下に下ろす。 こうして怒られたこと今までに何度かあるけれど、慣れることは無い。やっぱり怒られるのは嫌だな。 「おい、聞いてんのか志乃」 「···聞いてる」 「お前は本当に···はぁ···まあとりあえず、夏目君が1人で歩けるようになったのは良かった」 突然夏目の話になって、またその言葉に頷いた。 「酒出せ。飲む」 「···はい」 これは長くなるな、と思いながらキッチンに移動した。

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