232 / 292
第232話
志乃と今後どうするのか話をした。
俺は健人に謝らないといけないし、それだけで許してもらえるかと聞かれると、頷けない。
「健人」
「んー?ぁ、話できた?」
「できた···あの、健人···」
「話し合って志乃さんと帰ることなった?」
ケロッとした風に聞かれて、戸惑いながら頷いた。だってまさか、そんな風に言われるだなんて思ってなかったから。
「ならここで使ってた梓の物、どうする?また喧嘩した時のために置いとくか?」
「···健人、怒らないの?」
「怒る?え、何でなん。」
「だって···か、代わりみたいにして···」
そう言うと健人は俺の手を掴んで、志乃のいるリビングに戻る。
「志乃さん」
「············」
突然のことで上手く反応できてない志乃は、キョトンとしながら健人を見ている。健人はすごく真剣な顔をしていて、少し怖い雰囲気が漂っている。
「2人の間に何があったか知らんけど、次、梓が今回みたいになったら、その時はあんたには梓を返さへん」
「······ああ」
「あんたと一緒におったら、梓が幸せじゃないって判断したら、その時は梓のこと、俺が迎えに行くから」
「わかった」
志乃の返事を聞くと、健人は元の優しい雰囲気に戻り、俺の手を離した。
「俺は梓には怒らへんよ。梓は何も悪いことしてへんし、何より···俺梓のこと好きやからね」
「健人···ほ、本当に···ごめん」
「あれ、ここはお礼言ってほしいねんけど。」
「っ、ありがとう···っ」
健人に優しく抱きしめられる。この人と一緒にいた時間に後悔はないし、むしろ何度も救われた。俺も腕を回して、そうしているうちに涙が溢れ出す。
「またいつでもおいでね。喧嘩した時だけやなくて、いつでも」
「ありがとう」
涙を拭い、笑ってそう言った。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!