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第232話

志乃と今後どうするのか話をした。 俺は健人に謝らないといけないし、それだけで許してもらえるかと聞かれると、頷けない。 「健人」 「んー?ぁ、話できた?」 「できた···あの、健人···」 「話し合って志乃さんと帰ることなった?」 ケロッとした風に聞かれて、戸惑いながら頷いた。だってまさか、そんな風に言われるだなんて思ってなかったから。 「ならここで使ってた梓の物、どうする?また喧嘩した時のために置いとくか?」 「···健人、怒らないの?」 「怒る?え、何でなん。」 「だって···か、代わりみたいにして···」 そう言うと健人は俺の手を掴んで、志乃のいるリビングに戻る。 「志乃さん」 「············」 突然のことで上手く反応できてない志乃は、キョトンとしながら健人を見ている。健人はすごく真剣な顔をしていて、少し怖い雰囲気が漂っている。 「2人の間に何があったか知らんけど、次、梓が今回みたいになったら、その時はあんたには梓を返さへん」 「······ああ」 「あんたと一緒におったら、梓が幸せじゃないって判断したら、その時は梓のこと、俺が迎えに行くから」 「わかった」 志乃の返事を聞くと、健人は元の優しい雰囲気に戻り、俺の手を離した。 「俺は梓には怒らへんよ。梓は何も悪いことしてへんし、何より···俺梓のこと好きやからね」 「健人···ほ、本当に···ごめん」 「あれ、ここはお礼言ってほしいねんけど。」 「っ、ありがとう···っ」 健人に優しく抱きしめられる。この人と一緒にいた時間に後悔はないし、むしろ何度も救われた。俺も腕を回して、そうしているうちに涙が溢れ出す。 「またいつでもおいでね。喧嘩した時だけやなくて、いつでも」 「ありがとう」 涙を拭い、笑ってそう言った。

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