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第235話
何故か梓が泣き出して、俺の肩を涙で濡らしていく。それにつられるように、また胸あたりが苦しくなって、鼻の奥がツンとなって、涙が零れる。
「ごめんね、志乃」
「···何で、お前が謝んの」
「志乃が···そんなに辛かったのに、俺···っ」
「···お前を遠ざけたのは俺だ。お前を見てると甘えて···崩れちまうと思ったから」
だから梓は悪くないんだと言えば、梓は首を左右に振って、抱きしめる力を強くする。
「俺、頼りないけどもっと甘えていいんだよ」
「······そう、だな」
今思えば、梓と離れてからはしっかりと自分を保てていなかった。ただ正体のわからない何かに恐怖していただけ。
「志乃、大好きだよ」
そう言われるだけで心は軽くなって、余計に涙が増す。
こうなるまで気が付かなかった、梓がこれ程までに俺を作っているということに。
「俺も、愛してるよ」
抱きしめ返して、体温を感じ合う。
このまま梓とひとつになれたらいいのに。梓も同じ気持ちでいてくれるなら、それはとても嬉しい。
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