236 / 292

第236話 梓side

2人で一緒に泣いた日の翌日。 今日は志乃と一緒にトラさんのところに行く事になった。 沢山迷惑をかけたし、ちゃんと御礼を言いたい。 「晴臣さんにも、桜樹さんにも御礼しねえとな」 「そうだ···あーあ、俺本当いろんな人に迷惑かけちゃった」 「お前じゃなくて俺だよ」 志乃が自虐するかのようにそう言うから、じっと顔を見てキスをする。 「じゃあ、一緒に謝ろ」 「そうだな」 「行こっか」 「ああ」 志乃と手を繋いで家を出る。車に乗って、トラさんの病院まで行き、少し緊張しながら建物に入る。 いつもトラさんと一緒にいた部屋のドアをノックし、「トラさーん」と言いながらドアを開けた。 「梓君!あらやだ久しぶりじゃない!もう元気になったのかしら?」 「ぁ、もう元気。えっと···こっちは俺の恋人の志乃です。···長い間沢山迷惑かけてごめんなさい。」 そう言うと「何言ってるの!迷惑だなんて!」と俺の肩を軽く叩く。 「で、志乃君ね。初めまして、トラです!って···どうしたの?疲れてる?」 「いや···あの、梓がお世話になりました。」 「いいのよいいのよ!それより顔色悪いわよ?本当に大丈夫なの?」 「はい、大丈夫です」 トラさんに言われて改めて志乃を見れば確かに、顔色が悪い。 「志乃?無理してない?」 「してないよ」 「······本当?」 「本当」 体調が悪いんだろうか、それともまだ何か不安が残っているのだろうか。 優しく笑った志乃が俺の頭を撫でる。 「志乃君、こっちにいらっしゃい」 「え、」 「体温測って」 「いや、大丈夫なんで」 「いいから!」 トラさんにそう言われ渋々体温を測る志乃。 音が鳴って画面を見ると熱があった。 「体が疲れてるのよ。ずっと人の看病してたんでしょ?貴方も休まなきゃ」 「···でもこれくらい平気です」 「だめ!随分頑固ね。」 「しなきゃいけないことがあるんで」 「仕事のこと?今日は休みなさい!」 「いや、晴臣さん達にも挨拶しに行かなきゃならないから」 トラさんと志乃がほとんど言い合いをしていると、ドアが勢いよく開く。驚いて後ろを見るとハル君がいた。 「トラ!持ってきたぞー」 「あらありがとう。それより丁度いいところに来たわね。」 「あ?···梓じゃねえか!それに志乃も!」 久しぶりに見たハル君は俺の肩をぽんっと叩く。 「仲直りできたんだな」 優しく笑ったハル君に、コクっと頷いてみせる。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!