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第237話
「晴臣さん」
「おう」
志乃が立ち上がってハル君に頭を下げる。
「沢山迷惑をかけてすみませんでした。」
「迷惑なんて思ってねえよ。誰だって必死に頑張ろうとする時はあって、それは別に悪い事じゃねえ。それに何かあれば俺はお前の力になりたいと思うし、逆に俺に何かあれば、力になってもらいたいし。」
ハル君はとても温かい人で、この人に愛される陽和君は幸せだろうなと思う。
「ハル、志乃君熱があるのよ。話はその辺にして休ませてあげて」
「熱!?疲れてんだろ、俺のことは気にしないで休め。家まで送って行こうか?」
「多分夜中に熱上がると思うの。···梓君、看病できる?」
「···出来ると、思います」
でもちょっと不安だ。だって俺を看病してくれていた人はいない。小さい頃のことは覚えてないから、母さんが俺を看病してくれたことはあっても、思い出せない。
「でも···どうしたらいいのか教えてほしい···」
「んー···なら今日はここで私と一緒にしましょうか」
「わかりました」
志乃は大丈夫だと言って家に帰ろうとしたけれど、ハル君に止められて渋々トラさんの用意したベッドに寝転んだ。
「ちゃんと水分とってね」
「はい」
「志乃、何か欲しいものある?」
「ないよ」
それでもやっぱり、体は辛かったようで眉間に皺を寄せて目を閉じる。チョンっとその皺に触ると目を開けた志乃がふっと笑った。
「辛い?」
「いや、大丈夫。それより···桜樹さんのところにも挨拶行かねえといけねえのに···」
「燈人はあんまり気にしねえと思うけどな。」
ハル君がベッドの横にあった椅子に座ってそう言う。
「俺と燈人は普通に友達として関わりあるけど、迷惑かけたって思ってんなら、気にすんな」
「でも···梓がお世話になったので···」
「そっか。連絡先知ってるか?」
「いえ···」
「ならお前の体調が戻ったら教えてくれ。燈人に連絡してやるから。それまではゆっくり休め」
燈人さんのことはあまりわからないけど、俺は赤石さんに会いたいなぁって思う。
あの人と話していると自然と元気になれるから。
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