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第240話 梓side

「志乃君、何て?」 「···俺が消えそうで怖いって」 魘されていた志乃に声をかけ、一瞬起きた志乃。涙を流して寂しそうに言葉を落とすもんだから、普段からもっとたくさん甘えてくれたらいいのにと思う。 眠った志乃の頬を撫でて、手を握る。志乃はいつもいつも、本当はさっき言っていたような不安を抱えていたのかもしれない。 「志乃を支えられる人になりたい。もっと甘えて欲しい」 「···難しい問題ね。志乃君の立場は容易にそれができないから。話してしまえば梓君が危険に晒される話だってあるかもしれないものね。」 「俺は別に···それでもいい。志乃のことを護れるなら」 「けどそれは志乃君が悲しむんじゃない?」 トラさんにそう言われてしまうと、確かにそうだと頷く他ない。 「どうすればいいんだろ?」 「そうねぇ···ちゃんと話し合うしかないと思うわ。例えば···辛いことがあったなら、その気持ちだけ話して、とかね。理由は言わなくていいから、ただ辛いって言うだけ。」 「でも···それからどうすればいいの?俺はトラさんみたいに人の話を聞くのが上手じゃないし···」 「私も上手じゃないわよ!辛いって言われたら私は···そうね、否定しないでその人の言葉を肯定してあげるかしらね。私にはその辛い気持ちがわからないから、否定なんてできるはずが無いしね」 トラさんはそう言って、柔らかく笑う。 「そっかぁ···」 「ええ。···梓君ごめんなさい、私少しだけ仕事してくるわね。」 「あっ!俺の方こそごめんなさい!俺達のことは気にしないで!」 「すぐ戻ってくるわね。飲み物とかそこから取ってもらって構わないから」 トラさんが指さした冷蔵庫を見てうんうんと頷く。すぐにトラさんは部屋を出て言って、俺は志乃と二人きり。 「早く元気になってね」 額に浮かぶ汗を拭ってあげて、それから頬にキスをした。

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