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第241話
朝になって、志乃のベッドに上半身を預け座って眠っていたから、体が痛い。
ゆっくり伸びをして、眠る志乃の顔を見れば昨日より顔色はマシになっていて良かった。
「梓君おはよう。ご飯食べるでしょー?」
「おはようございます、ご飯食べる!」
ずっと握りっぱなしだった志乃の手を離す。「待っててね」と声をかけて席を立ち、トラさんのいる方に移動した。
「ちゃんと眠れた?ベッド使えばよかったのに」
「んー、でも志乃と一緒に居たかったから」
トラさんは「愛されてるわねぇ」と言いながら、ご飯を用意してくれて、二人で一緒に食べた。
***
「ん···」
「ぁ、志乃?起きた?」
昼前になって志乃が目を開けた。
「トラさーん!志乃起きた!」
「はいはーい」
トラさんが志乃を診て、志乃は「大丈夫」とトラさんに言った。
「そう?熱は下がったし、体が辛くないなら帰ってもいいわよ」
「帰る···梓、帰ろう」
「帰るの?でも車の運転···俺出来ないよ」
「別に運転くらいできる。」
「···本当?ボーってしてない?」
そう聞くと志乃はこくこくと頷いた。
「じゃあ···早く帰って今日はまだ1日休んでおこう。」
「梓君、もしまた熱が上がってきたら連絡してくれる?」
トラさんから連絡先をもらって、俺は志乃と一緒に帰ることに。
車を運転する志乃は一度深く呼吸をして、車を発進させた。
「辛かったら止まってね、大丈夫だからね?」
「ああ」
「無理しないでよ?」
「大丈夫」
いつもよりゆっくりとした運転をする志乃に、無理させてることが申し訳なくなる。俺も免許を取って志乃を送り迎えするくらい、できるようになりたい。
「免許取ろうかな」
「今変な事言ったら事故起こす気がする」
「え、待って。怖すぎる···わかった、黙るね」
志乃がフッと笑って、「嘘だよ」と言い俺の頭を撫でた。前よりも優しいその手つきに胸がキュンキュンしてるのは秘密。
「看病してくれてありがとな」
「···なんか、今日はちゃんと自分の気持ちを伝えてくれるんだね。そういう志乃は好きだよ」
「···普段からそうだろ」
「ううん。全然そうじゃない。自分の気持ち隠してばっかりだし、たまに困る。例えば···怖いなら怖いって言えばいいのに」
志乃の動きが一瞬止まって、けれど、さもそれがなかったかのように平然を繕う姿はまさに、俺が今言ったことなのに。
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