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第248話

*** 「夏目さん、もう1人で歩けるようになったんですね!」 時間は経って、夏目さんの怪我は治り、1人で歩けるようになった。リハビリも兼ねて家まで来てくれた夏目さんに、珈琲と、甘いお菓子を出して一緒に話をする。 「はい、でもまだ走ったりとかは厳しいから、仕事も組でパソコンとにらめっこしか出来ないんですけど···」 困ったように笑う夏目さんに、隣に座っていた志乃が「十分助かってる。」と言った。それを聞いて、夏目さんは少し嬉しそうな表情になる。 「それなら、良かったです。」 そう言って、少し照れているのか珈琲を飲んで、視線を下に向ける。 それから思い出したように勢いよく顔を上げた。 「あの、俺···姉ちゃんとお墓参り、行ってきました」 「···そうか。良かった。ちゃんと話せたか?」 夏目さんのその報告が志乃は嬉しかったみたい。柔らかい表情で夏目さんの話を聞いている。 この話は俺が入り込むのはまずいなと思って席を立ち、キッチンに入った。 そこでお菓子をつまみ食いしながら、今日の晩御飯は何しようかなぁと考える。 「···ホワイトシチュー食べたいなぁ」 外は寒いし。丁度いい。 後で志乃に提案してみよう。 シチューにするならおかずは──··· 「梓、夏目が帰るぞ」 「えっ!ぁ、うん!」 キッチンに志乃が来て、そういうから慌てて玄関に向かう。 「また来てくださいね!」 「はい。ありがとうございます」 夏目さんとも、色々あったけれど、今はいい人だってわかっているから、また来てって言える。 一時は志乃が夏目さんのものになるかと思って、夏目さんを遠ざけていたけれど、それは間違いだったな、と今更ながらに反省したりして。 夏目さんが帰っていって、志乃と俺と二人きり。さっきの晩御飯の話をしようと思って「ねえ!」とリビングに向かっていた背中に声をかける。 「ん?」 「晩御飯の話なんだけどね」 「···まだ昼飯も食ってねえのにか?」 「ホワイトシチューが食べたい!」 「わかった」 志乃はふっと笑って、近付いた俺の頭を撫でる。それが嬉しくて抱きつけば、抱きしめ返してくれて、俺も志乃も、愛情表現の仕方が成長したな···なんて、あまり意味のわからないことを思った。

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