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第250話 志乃side

言葉にすれば簡単だった。 見えなかったものも見えてきて、間違いも正される。 目の前で柔らかく笑う梓は、何よりも愛しい存在で、だからこそもう傷つけないように、心を伝える。 「愛してる。誰よりも、何よりも」 「···ふふっ、今日はやけに素直だね。素直な志乃は大好きだよ」 「大好き、だけか?」 そう言って目を合わせると恥ずかしそうに視線を逸らし、けれど意を決したように俺を見た。 「あ、あい···愛···してる···」 梓のその言葉は魔法みたいで、胸が温かくなって、例えば今がどれだけ悲惨な状況でも、幸せに感じられるんだろう。 愛している人に愛されることは、こんなにも力になる。 きっとまた、間違えることはある。けれどその度に言葉を紡いで正していく。 愛する人と、一緒に。 shino end

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