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番外編 怖い人の恋人達
***
志乃が迎えに来てくれた。ハル君が門の前まで送ってくれて、そこでバイバイする。
「志乃」
「何」
「会いたかった」
「·········熱でもあんのか」
車を運転する志乃。片手が俺に伸びて額に触れる。
「熱はねえな。寝てんのか?」
「起きてるよ」
「···何か嫌なことでもあったのか?」
「違う。ただ···本当に会いたかっただけ」
そう言って志乃の方を見ると、志乃がなんとも言えない表情をしていて笑ってしまった。
家に着いた頃には、志乃に触りたくて仕方なくて、玄関に入り靴を脱いで先に廊下を歩く志乃に飛び付いた。
「うぉっ!」
「志乃、志乃ー!」
「······重い」
「会いたかったんだってば!ハル君と陽和君が目の前でイチャイチャしてるし!そんなの、俺だってしたいじゃん!」
「······降りろって。」
仕方なく志乃の背中から降りてやると、前から抱きしめられて志乃の首筋に顔を埋める。
「イチャイチャって、それだけでいいのか?俺は今日はもう仕事ねえけど」
「···終わったの?」
「終わった。明日に回したくねえし、早く帰りたいし、必死でやった」
「偉いね。頑張った志乃にご褒美あげる」
「そのご褒美はいいやつか」
「わかんない。俺にとってはいいけどね」
そう言って志乃にキスをする。志乃は目を細めて、噛み付くようにキスを仕返してきた。
「志乃に触りたいから、志乃も俺に触っていいよ」
「それがご褒美?」
「うん。嬉しい?」
「ああ」
今この瞬間思ったけれど、もしかして俺と志乃って、ハル君と陽和君以上に仲良しかもしれない。というか見えない鎖のような何かで繋がれているような感じ。あの二人の間にはそんなものがあるとは感じなかった。
「お風呂入る?ベッド入る?」
「···ベッド」
「ふふっ、連れてって」
ふわっと体が浮く。さっき重いって言ってたけど、全然余裕に抱っこしてるじゃん。って思う。志乃って本当力あるよなぁって。
ベッドに優しく降ろされて、かと思えば噛み付くようなキスをされてゆっくりと押し倒される。
目が合うと優しく目が歪められるけれど、その奥にはギラギラしたものがあって、すごく興奮する。
「志乃、っ···は、もっと、触って」
志乃の手を取って、頬に当て、手で挟む。それだけでも温かくて気持ちいい。
「ああ。お前も」
それはすごく優しくて、愛しい声だった。
番外編 怖い人の恋人達
END
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