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俺とアキ 5
「え〜っと、何にしようかなぁ。あ、このおにぎり美味そう。あ、このパン新商品じゃん」
まともに食事も取れず、寝てばっかだった身体が欲するのは炭水化物に甘味、野菜…は要らないや。
欲望のままにカゴを手に取り店内を練り歩いた後、あ〜これ良いな。と目に付いた新商品の菓子パンやフルーツゼリー。
おにぎりもいくつか買っちゃおうかなぁ。あ!桃の果実100パーセントジュース?んなの美味いに決まってんじゃん。あ!これアキが好きなやつだっけ。買ってあげよ〜
「あ〜、…これはやりすぎましたかね」
気付けばカゴパンパンに詰められた飲食類に、ん〜と考え直してみるがカゴに入れてしまったもんは仕方が無い。棚に戻すのも気が引けるし、何よりも面倒くさい。
しかもアキの好物ばっか選んだりしちゃって。
ちゃんと俺の分も…買ったっけなぁ…?
カゴの中をゴソゴソと漁りながら確認をするも既にこれ以上商品を足す訳にもいかず、仕方ないと会計をしてもらいパンパンに詰まったコンビニ袋を両手に抱え店の外へ。
ん、あれ?何か携帯鳴ってない?ちょっと待ってね〜と両手に抱えた袋を片手にまとめ、ポケットの中を探りながら手に取った瞬間、その存在にハッとする。
やっべ、す〜っかり忘れてた。
そう言えばお忍び外出中だった事を忘れ去ってしまい、悠々と買い物してしまってた事を思い返す。
いや、ん〜、どうしようか。こればかりは…聞こえない、フリ?と、いってみましょうか。
すっかり重く感じる手の中の存在から意識を逸らし、きっとこの着信音は気の所為だと再びポケットの中にポイッと携帯をしまい寮に戻るべく歩みを進めていた、のだが...
中々鳴り止まぬ所か何度も掛け直されてる。怖すぎ。流石に出なきゃいけない、か
1度足を止めて荷物を地面に置き、恐る恐る画面を確認してみれば
『着信有り 20件』
ふ〜う…さすがに怖すぎ。あ〜あ、心臓が何個あっても足りないや。どうしよ
すると再度鳴り響く着信音。画面には『アキ』と示された2文字が、今では『悪魔』という文字に見えんでもない。…、…仕方ない。男の気合、見せますか
覚悟を決めて着信ボタンをポチッと押すと恐る恐る携帯を耳に当ててみる。
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