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俺とアキ 8

「俺が10数え終わるまでに、今すぐに帰ってこい。ただそれだけ、簡単だろ?因みに間に合わなかったらそこら辺にあるベンチで朝までコースって事で。かわいそ。んじゃ今から、はい、スタート」 「はぁ?!?じゅ、じゅう?!んなの無理「いーち」 鬼畜過ぎる!!!! 急いで音声をスピーカーモードに切り替え荷物を両手に持ち直し走り出す。朝までベンチコース?!それこそ凍え死んでまうわ!!!アイツ本当に鬼の角5本くらい頭から生えてんじゃねえの?! 混乱する思考の中ただひたすら地獄のカウントダウンを聞きながら突っ走る事に精一杯で、溢れ出す鼻水や全身を包み込む寒さに気を取られてる暇もなくただ走り続けるのみ、正にそう、今俺、一生懸命生きてます…!! 「にー、さーん」 「もうちょっとゆっぐりぃいいい!!!」 寮とコンビニなんて目と鼻の先位でそう遠くも離れてない筈、だけど10秒は苦し過ぎる。絶対に無理だ。それでも秒数を過ぎて帰宅する事は所謂=死を示している事は百も承知している。 優しいアキだから、と甘えても今回ばかりは通用しない事も雰囲気で察してしまったのだ。今更風邪っぴきですなんて言っても精々鼻で笑われる位だろう。 俺のばかやろう⋯ちょっとは学べって スピーカー越しに宣言される残り僅かな秒数に体を震わせながら息も絶え絶えに冬の景色を駆け抜けてそしてついに目の前には見慣れた寮が。お、やれば出来るじゃん俺。 「なーな。ほら、早くしねえともうそろそろ終わっちゃうかもな」 「まぁああああ!!あと少しだから!マジで!!!」 運良く1階で待機してくれてたエレベーターの中に滑り込むと目的の階を選び連打。 「急げ急げ、急げよエレベーター頼む…!アキー?!俺いまエレベーターに乗ってる!乗ってるからね?!」 「あ〜、全然聞こえませ〜ん」 「聞こえてるじゃん!!!」 辿り着くまで落ち着けるはずも無く、スピーカー越しにきっと聞こえるだろうありったけの声量で現状を叫びながら今か今かと階数を駆け上がる画面表示をじっと眺める。その間も止まる事無く繰り返されるカウントダウン。そして、 「きゅう、…、じゅーう「ついたぁああああ!!」

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