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俺とアキ 10

「あ〜あ、今日は風邪っぴきだしメンタルもよわよわになっちゃってますなぁ。って、うわ、俺怖すぎ」 今までも色んな場面でアキに甘え、負担を掛けてきてしまった過去を思い出し、何故だか急に塞ぎ込んでいく気持ちを整理しよう、と言葉に出してみるものの今日は中々上手くいかない。 体も心もダメダメだわ、なんて肩を落としながら取り敢えず洗面所へ。一体俺の顔はどうなっているのかと確認してみれば強打した額や頬は赤黒く染まり、鼻先や顎には擦り傷。おまけに口の中は血で真っ赤に染まり、ホラー映画にでも出たら皆逃げてくんじゃねえの?なんてレベル。 あ、ズボンも膝の所破けてる。 お気に入りの部屋着だったのに…なんて考えながら蛇口を捻り両手で掬った水で傷口を浸していく。その瞬間に広がる痛みに小さな悲鳴を上げながら、粗方傷口が綺麗になった事を確認した後水を口に含んで口内の血を洗い流しながら最後に鏡で確認。 まあ、色々酷いけどこれで良いだろ。 濡れた手や顔をタオルで拭いてリビングまで繋がる廊下に出ると、外を片付け終えて部屋の中に移動したのであろうアキの動く姿が確認できた。 袋の中身を片付けてくれているのか、ガサガサと袋同士の擦れ合う音が聞こえてくる。きっと向こうには鬼の顔をしてるアキが居て、怒られるんだろうなぁ。…仕方ない、ずっとここに居る訳にもいかないし、それに…謝らなきゃいけない事も沢山ある。 気合いを入れてリビングに1歩踏み出せば俺の姿を確認するなり手を止めて、普段から救急箱の置かれてある戸棚の前まで移動するアキの後ろ姿を見つめながら、ぎゅっと拳を握りしめそっと口を開く。 「あ、き…?…、ごめん。」 「良いから。さっさとそこに座れ」 「あっ、ハイ…」 きっとカンカンに怒りながら説教でもされるもんだと無駄に意気込んでたのだが、普段と変わらない表情で救急箱の中をがさごそと漁るアキの姿に拍子抜けしてしまう。 取り敢えず指示された通りソファーにちょこん、と座るとその隣に続けて腰を下ろしたアキにこっちを向け、と顎で体の向きを指示される。改めて、互いに向き合う形で座り直せば俺の顔をじっ、と確認し必要な物だけを選別してテーブルの上に並べ直す。 消毒液をガーゼに数滴垂らし、擦り剥けた額の傷にペタリ 「っ、!!い、っだぁ!」 「ハイハイ、そりゃそうなりますよ。もうちょい我慢しろ」 「ゔ〜っ…」 ほんっとうに痛え。ツン、と傷口から染みる消毒液の痛みに目をぎゅっと瞑り、ひたすら耐える。鼻の先、頬、顎、手慣れた作業で粗方消毒を終えると傷の大きさに合わせて絆創膏を貼ってくれた。顔が終わると次、と破けた膝の辺りを確認し始める。 確かに衝撃はあったがそこまで気になる程でも無いと伝えると、お前の話は信用ならないと結局ズボンを脱がされ下着姿のまま、膝とその他の場所もついでに確認をされる事に。 そんなに信用無いかぁ?…いや、…まあ、そうだなぁ。自覚しかねえわ。

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