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俺とアキ 11
「ん、後はこれ位で平気だろ。ったく…大道芸の練習でもしてんのか?球投げとか」
「んな訳ないじゃん。ただのいつものヤツじゃん。ドジとかなんか、そう言われてるやつ」
「その内派手な怪我でもしたらどうすんだ。危ねえだろうが、馬鹿」
「…その通りで、すね。はい」
鋭く細められた目に捉えられてしまえばガチり、と全身が固まり身動き1つさえ難しくなってしまう。今なら蛇に睨まれたカエルの気持ちが痛いほど分かる。
俺の処置を終え、救急箱を片付けに向かうアキの後ろ姿を見つめながら俺も脱いだズボンを履き直し、ソファーに座り直す。
丁度戻って来たアキも俺の隣に再び腰を下ろし、ふう、と一息吐き出したかと思えば少し長めの前髪を掻きあげながらあの鋭い目をじとり、と俺に再度向けてくる。
「…、で、他に何か言う事は?」
「あ〜のぉ…えっと、そうだね…。勝手に外に出てすみません、デシタ」
「それで?」
「それでえ…?…アキがお風呂に入ってる間に出て帰ってきちゃえばバレな…大丈夫かな、と思って」
「で?」
「えっ、とだから…その…ちょっとだけ外に出ちゃおうかな、なんて…」
「………へえ。」
何度も繰り返される質問攻めに段々口数が減り、もごもごと言葉に困ってしまう。うわぁ、やっぱり怒ってたじゃん。
オーラを隠しもせず静かに淡々とした口調で俺を問い詰めるアキに俺はただ罪悪感に蝕まれながら、軽率に外になんて出るもんじゃなかったな、とか、アキにそもそも隠し事なんて出来た事がこれまでにあったか、とか、思う事は沢山あるのだが上手く言葉としてそれを表現出来ず、最後に一言ごめん、と呟く様に吐き出し俯く事しか出来なかった。
そんな俺の姿を見て、ん〜、と暫く考える素振りを見せるアキの口が開くまでの数秒の沈黙の間がとても長く、反省するには充分な時間であった。
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