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もう一つの… 1

「…、…あ〜あ。やると思ったわ」 ガコン、と派手な音を立てて何故かサッカーゴールのポールに顔面を強打している親友、夕(ゆう)に俺は深い溜息を吐き出しながら立ち上がる。 体育の授業中、今日はサッカーだなんて陽気にはしゃぎながらノリノリで走り回る姿を最初は微笑ましく眺めて居たのだが、段々とおふざけが加速し達人技なんて言いながら様々な無茶振りを始めた辺りから薄々勘づいていた。 あぁ、そろそろだろうな、と。 案の定、前も見ずに走り回る夕が綺麗に正面激突してる様を悠々と見届けながら、周りのクラスメートもいつもの事だと対して慌てる事も無く、大丈夫かぁ、なんてケラケラと笑い転げている様だ。 「お前さぁ、いくらなんでも俺の夢はサッカーボールになりたかっただけ〜なんて馬鹿な真似はやめろよ」 「う、うぅ...だ、れもそんな事いっでねえじっ!!」 衝撃で鼻の中でも切ったのであろう、ぽたぽたと鼻から血を垂らし痛みに顔を歪める夕の姿を見ながら茶化し言葉を伝えれば、言い返す余裕はある様でギリギリと歯を食いしばり八つ当たりと言わんばかりに俺の足にポカンと、弱々しい夕の拳が当てられた。 「せんせ〜?コイツ、俺が代わりに保健室に連れて行ってくるんで。授業続けて貰ってて大丈夫っす」 「はいよ〜、頼んだ。毎回ご苦労さんな。夕専属のマネージャーさん」 毎度馴染みの光景にハイハイ、と軽い口調で俺を送り出す担任に向けて「なにそれ〜」と怪訝な表情を見せながらも少しは反省してる様で大人しく血が垂れない様にと鼻を摘みながら歩く夕の隣に並び、歩幅を合わせて保健室まで歩みを進めていく。 「今日は鼻だけで済んだのか?良かったな」 「良くは無いけど…、んまあ、だいぶ俺の鼻が高くてその分衝撃も減ってくれた、って言うか」 普段なら数箇所傷を残している所だが、打ち所が良かったのか何なのか、本人も鼻を気にしてる位で他は無事な事を横目に確認すると一応忠告、とばかりに何度目かの注意を促す言葉を続けてやれやれと肩を竦めてみせる。

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