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もう一つの… 4
「もし怖かったら俺が下から支えてあげるから!大丈夫だよ〜アキ!ほら、おいで!」
「お前よりは色々と鈍ってないんで、大丈夫です」
逆に待たれてる方が怖い、とその場から退く様に促せばそれが気に入らなかったのか「臆病者〜」とヤジを飛ばす夕の言葉に耳を向けず、さっさとフェンスを乗り越えてしまえば一応着地場所を確認しつつ夕の後に続いてその場へ降り立つ。
よく知ってんな、こんな場所
「ここね、下を覗くとちょ〜怖いの。高すぎて落ちたら死んじゃう〜って感じ」
「覗く前にすっ転んで慌てるまでが流れだろ?お前鈍臭いし」
「…そこまでじゃねえし」
何が面白いか分からない、とフェンスの先を覗きながらその景色を眺めていれば、「こわい〜」だなんて嬉しそうに叫ぶ姿。
色んな所にぶつかりすぎて頭でも可笑しくなってんじゃねえの。そう小言を返した瞬間、急に静かになる夕に疑問を覚え、ふと隣に視線を向けてみる。
なんか、嫌な予感がするんですけど
「…あ〜あ、ほんとだ。俺ちょ〜頭が可笑しくなっちゃったから、アキも一緒におかしくなって笑ってくれなきゃ気が狂いそ〜!!」
「…、っ、うわ、あ!ばっ、やめろ!!」
俯いていた夕の、言葉と共に見せた表情を目の前にした途端、本能が『逃げろ』そう告げたが時既に遅く。
ガバッと力加減も一切無く抱き着かれた拍子に背後へと倒れ込んでしまい、俺の腰の上へと馬乗り状態の夕が始めたのは所謂、擽り攻撃。
「笑え〜息が出来なくなるまで思いっっきり笑え〜!!」と執拗に脇腹を擽られる感覚にもがきながらも抜けた力では現状をどうする事も出来ず、結局夕が満足するまで擽られ続ける事数分…
漸く気が済んだのか清々しいまでの笑顔でそのまま俺の胸の上にばっ、と倒れ込むと「楽しかったぁ〜」と呑気な口調で呟く夕の言葉が聞こえた様な気がした。
「…、…はぁ、笑い過ぎて腹痛えし重てえし、最悪」
「どお?アキってばいつもクールぶってるから、たまには思いっきり笑った方がスッキリするでしょ?」
「んな笑かし方されたら逆にストレスでぶっ倒れるわ」
胸元に引っ付いている夕の頭を軽く叩けば「いてっ」と対して感じても居ないであろう声が漏れるだけで特に気が済む訳でも無く。
いつまでこうしているつもりなのかと問い掛けようかと思いもしたが、
まあ…。
たまには良いだろうと頭上に流れる青空を眺め続ける事にした。
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