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なんてことない日常 2
「あっ、待ってアキ。ボタン間違えてる」
「うわ、マジか...あれ、直してくれんの?」
会話の途中、手元から視線を外して居た為かボタンの掛け違いを指摘されてしまえば気付かなかったとシャツに視線を向けて。
すると、いつの間にか靴を脱ぎ部屋に上がっていたのらしく、目の前で立ち止まりそのまま伸ばされた夕の腕がシャツのボタンに触れて直してくれる。
下段の方で違えていた様で、2、3個戻す程度で元に戻れば少し後ろに下がって俺の全身を確認する様に視線を向けていた為、そのまま判断を委ねる事にした。
「よし、出来た。案外しっかりしてるように見えて、そうじゃない所も沢山あるもんね、アキって」
「ん〜まあお前と比べたらほんのちょこっとだけな」
「う〜わっ!イヤミ小僧だ〜。はぁあ、朝からヤダヤダ」
げげっ、と大袈裟に顔を歪ませて唇を尖らせながらズンズンとそのままリビングまで突き進む夕の後ろ姿を見送りながら、何も間違って無いと思うんだけど。そう言葉を続ければ「うるせ〜!」と叫ばれた言葉にふっ、と堪えられなかった笑いを漏らして寝室へと行き先を変える。
クローゼットの中から取り出したカーディガンに袖を通し、その上からブレザーを羽織れば最後に鏡で全身を映してみる。ついでに軽く髪型も整え、よし、他に気になる場所は無さそうだわ。
ふと、背後でドアの開く音が聞こえ鏡越しにその本人へと視線を合わせてみる。
「ほお、何か忘れてました、って顔ですね、それは。正解は?どうぞ」
「おっ!当たり〜!すごいね、アキ。しかもすごく大切な事をさ、忘れちまってましてぇ」
自分の部屋に忘れ物でもしてしまったのだろうか、そんな感じだろうかと適当に問い掛けてみれば見事に的中だと返された言葉に、まぁそんな事だろうかと。
今なら部屋に戻る余裕も残されてる事を告げる為、口を開いたのだが...。隣に並んだ夕の両手に頬を挟まれ、互いに視線が合わさる様に顔の向きを強引に変えられてしまう。そのまま2人の距離が無くなるまで間は無く、口付けをされたのだと気付いた時には既に夕の顔は目の前にあって、にんまりと得意気に「ね?とても大切な事でしょ?』と笑っていた。
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