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なんてことない日常 9

俺がゲームの進行から抜けた事で2つのコントローラーを交互に操作しながら進めている相手の姿を横目に確認する。めんどくさ、なんて呟く姿に自業自得だと皮肉を込めて鼻で笑い飛ばして。 「だから、そこに今入る必要無いだろって何回も言ってんじゃん。ほら、そこのアイテム拾えって。.....おい、聞いてんのか?ちゃんと考えて進めてけ」 「は〜?ちゃんと考えてます〜。まったく...分かってないのはアキの方だろぉ。しっかりしてよ」 「効率が悪い、って言ってんの。いつまでもそんな所でタラタラしてても意味ねえだろ。もうそこは良いから、次に進めって。早く」 対して何をする訳でも、出来る訳でもない状況に暇を持て余し、結局自然と意識が向かうのはゲーム画面で。 不穏な雰囲気の場面では視線を逸らし、なるべく情報を遮断しながら、ああでもないこうでもないと謎を解く夕の手が止まる度にどうにかしろと、あれこれ指摘を促しながら隠しきれない苛立ちを滲み出して。 「だ〜!!もうアキ五月蝿い!!うるさすぎ!!集中出来ないよさっきからぁ!!暇なら一緒にやってよ!!」 「無理。元はと言えばお前が原因だろ?俺の身にもなってみろ、意地の悪いお前の所為で部屋に帰れねえんだぞ。わーわー騒いで、ガキかよ」 「はぁあ?どっちがガキだよ。こんなのが怖いって騒ぐアキの方がよっぽど子どもだろ?それに、俺怒らせたらもう部屋に泊めてあげられないけど」 「そうやって自分が悪い、って事を素直に認めない所がガキだって言ってんだよ」 初めの内は軽口を叩きながらも操作に集中していた夕だが、止まらぬ野次に我慢の限度でも迎えたのか。じとり、と向けられた視線に対抗すべく目元を細めながら隣を睨み付け。 同時に始まる口論に対して、どっちが悪いのだと不満に不満を被せて言葉を返し続けて。 「……へぇ、そっかぁ。俺ガキで何も分かんないからこんな事とかしちゃうけど、仕方ないよね。は〜あ、ほんとイライラする」 「おーおー、何でもしろよ。どうせお前のする事なん、かっ...?!っ、うる、せえ!!おい!!それとこれとは訳が違うだろうが!!」 口論の末、無表情で口を閉ざした夕を目の前に次は何だ、と予測不能な行動に合わせてすぐ制止出来る様にとソファーに沈めていた身体を起こし。 だが、その判断よりも素早く動いた夕の腕がテーブルの上のリモコンを手に取り、テレビ画面に向けて最大音量までボリュームを上げ切ってしまう。 部屋中に大音量で響き渡る無数の呻き声。ヤバすぎる。両耳を閉ざし、早く止めろ。そう声を荒らげながらリモコンを取り上げるべく腕を伸ばすが、避けられてしまう。 「たの、むからマジで耳が可笑しくなるって!!隣のヤツにも迷惑だろ?!」 「え?何?うるさくて何も聞こえないですー。やだ、絶対無理。触るなってば」 腕を掴もうとも逆にその行動を止められ、また逆の腕を、と何度試しても結果的に無駄な攻防を繰り返し続けてるだけで。 手強すぎる、どうするよコレ。段々と怒りが沈み冷めていく思考の中、本日何度目だろうか。深々とした溜息を吐き出して

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