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なんてことない日常 11
「ふ〜、面白かったぁ。アキってば、何回も同じとこでうわあっ!!って驚くんだもん。ほんとに怖いんだねぇ〜」
「あんなもん何回見ても慣れる訳ねえだろ。ったく、ケラケラ笑って馬鹿にしやがって…ほんと気が悪いわ」
区切りの良いタイミングで何度もそろそろ終わろう、そう声を掛けたが「絶対に最後までやる」その一点張りで。
付き合わされるがままに無事迎える事の出来たエンディング、やっと終わった。そう呟きながらげっそりとした表情でコントローラーを手放して。
その頃にはすっかり機嫌を取り戻し、嫌味なのか同情なのかどちらとも読み取れない表情でヨシヨシ、と調子良く頭を撫でている夕の手を軽く払い除ける。
そのままソファーから立ち上がり、長時間同じ姿勢を続けていた事で凝り固まった身体を解すべく、頭上に両腕を向けて思いっきり伸びをして。
「俺ら、今から風呂にも入らねえといけないし、飯もまだ。どうしますかねえ、夕さんよ」
「ん〜っとねえ、じゃあアキと一緒にお風呂入っちゃう。ゆ〜っくり長風呂でもしちゃおっか?」
「そういう事じゃねえんですけども、話聞いてます??それに、2人じゃあの風呂場は狭すぎる」
そもそも一体今は何時なのだろうか?飯を買いに行く時間はあるのか、忘れていた時間の概念を思い出し慌てて壁掛けの時計を確認してみれば、まだ20時半程度。セーフ。
それならばもう少しゆっくり準備も出来るだろうと選択肢を委ねてはみたが、相変わらずおふざけモード全開で。そもそも本気なのか?よく分からないが、真面目に受け取る理由も無いよな。
まあ、却下で。とにかくその前に服を貸してくれ、そう伝えると、仕方無いなぁとソファーから立ち上がり、寝室に向かう夕の後に続いて。
「あのさぁ、俺はアキの為に聞いてあげたんだけど。あんだけ怖い思いしたんだから、お風呂だってきっと怖いでしょ?水場ってほら、よく寄ってくるよ。って言うじゃん」
「おい、止めろ馬鹿。は?んなの迷信だろ、まだそんなの信じてる訳?まだまだケツの青いガキだな〜お前は」
「あ〜あ。じゃあ、アキ頑張ってね?怖いよぉ〜、絶対。ホラ見て、あんなに暗い所に今から行かないといけないんだって。あ〜こわぁ!」
「っだからやめろって、ソレ!お前の方が俺より怖がってんじゃねえの?んなの、さっさと行ってお前と代わってやるよ。残念だったな」
明らかな脅し文句と怖がる素振り、ただ面白がってるだけだと、軽口を叩かれても気にしない。そう自分に言い聞かせて差し出された衣服を奪い取る様に受け取れば、早速風呂場まで向かう。
そのつもりだったが、結局そのまま寝室から出る事さえも出来ずに振り絞った勇気は無惨にも一瞬で砕け散る。回れ右。「おい、一緒に入るんだろ。早くしろ」
そう背後で笑う夕に声を掛けては、二人仲良く並んで風呂場まで向かう事に。
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