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なんてことない日常 14

何にしようか、コンビニの陳列棚を眺めながら思考を悩ませる。 もう少し時間が早ければ学食も開いていただろうが、今回ばかりは仕方が無い。悩んだ結果、今日は麺の気分だと数有る種類の中から和風パスタを手に取ればカゴの中に入れ、ふと周りを見渡す。 確かさっきまで自由に歩き回っていた筈の夕の姿は一体何処に、と店内を回ってみればデザートコーナーで品を手に取り、なんだか難しそうな表情を浮かべている光景を見つける。何をそんなに悩む事があるのだと歩みを進めて隣に並べば、カゴの取っ手に両腕を差し込んだ状態で腕を組み、顔を覗き込んで。 「んな顔して、どうした?」 「あ〜アキ。えっとねぇ、そこのプリンパフェも美味そうなんだけど、そっちの新作のフルーツロールケーキも気になってさぁ。どっちにしようかな〜って」 選びきれない、と眉を寄せる姿を横目に商品棚に視線を向けてみる。 確かにどちらも魅力的で悩むのも当然だろう、と理解しては再び悩み始める夕を他所に俺も何か買おうかな、なんて棚に視線を向けて。順序よく眺めていたのだが、視線の先、ふと気になった夕のカゴの中に注目してみる。 チョコに、ポテトチップスに、その他甘味諸々……そして、目の前のデザート。「おい」と声を掛け飯の有無を問い掛けてみれば、ん〜?と視線を宙にさ迷わせた後、何故か再び商品棚に向き合う姿。 あ、無視したなコイツ。こう言う時は、と夕が手にしているデザートとは別の片方、悩んでるらしき新作デザートを手に取ればそのままカゴの中に突っ込み、続けて弁当コーナーを指し示して。 「それ、一つ買ってやるから帰ったら半分な。ただし、飯食った後に」 「……バレちゃったかぁ。分かったよ、ご飯食べた後ね。行ってくるよ」 「おぉ、何買うか見ててやるから。ちゃんと選べよ」 「ハイハイ、っと。どれにしようかなぁ〜?あ、アキそれにしたの?じゃあ俺もパスタにしよ」 うまく誤魔化せたとでも思ったのか、ちぇっ。と不服そうに、それでも素直に弁当売り場まで向かう夕の後ろ姿に続いて。 俺のカゴを覗き込んだ後、種類こそは違うが別のパスタを同様に選びカゴに入れた事を確認してはそのままレジまで向かう。店員に会計を通して貰い、寮に戻るべく夕の隣に並び歩みを進めて。 「うぅ〜相変わらずさっむいねえ。そろそろ雪とか降るかなぁ?」 「そうだな、テレビでも来週とかその辺って言ってた気がする」 「楽しみだなぁ…一緒に雪だるまとか作ろうよ。大っきいのと、ちっこいの」 全身を包み込む冷気にぶるりと身体を震わせる。ピタリ、と体を寄せて歩く夕の温もりを感じながらふと今朝見たばかりの天気予報を思い出す。 両手で雪だるまの形を表現しながらその大小を伝える姿に、雪が積もったらな、と軽く返事を返して。 「わぁ、みて!白い息出てる!……あ、アキの鼻とほっぺ真っ赤っかじゃん。寒そ」 「っ…夕の手の方が冷たいわ。風呂上がりだし、さっさと冷え切る前に帰るぞ」 ぼんやり黒く染った空に視線を向けて居れば、ふんわりと白く染まった息を吐き出し嬉しそうに笑う夕の声に意識を向ける。 互いに絡み合った視線の先、此方に伸ばされた手が鼻先に触れる。指先の冷えた感覚に瞳を細めては、その手に触れて包み込む様にギュッと握り締め、嬉しそうな夕の腕を引きながらそのまま寮へと向かう足を早めて。

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