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※ ふたつの雪だるま 12
もう少しだから、そう言い聞かせる様に耳許で囁けば何か物言いたげに開かれていた口が静かに閉ざされ、代わりに夕の眉間にシワが刻まれていく。
「もう少し」その言葉を素直に信じて受け入れ、限界を超えたとしても必死に抗う目の前の表情。
その姿にドクン、と胸が高鳴る感覚を覚える。
「っ⋯⋯き、っつ⋯⋯⋯⋯!」
互いのものが擦り合わされる度にドクドクと脈打つ感覚が直に触れ合っている事で伝わってくる。1人の時とは違う、行為にも似た様な異なる感覚に俺の熱も想像以上に限度が早く、そろそろ限界が近い事を悟る。
が、すぐに出してしまってはこの目の前の表情が消えてしまう。幸いもう少し俺の余裕的にも焦らす事は可能で、それならばその間に揺さぶってやろうと腰を揺らす行為を止める事無くもう片方の手で夕のものを緩く扱きながら先端ばかりに刺激を与えてやる。
「ッ゛ぁあ⋯?!!ま、っ⋯!!アキっ!!!」
「ま⋯だ、我慢できんだろ⋯⋯⋯?もう少し、付き⋯⋯合え」
「んん゛っ!!それ、は無理っ⋯だ、って⋯ぇ⋯!!」
びくり、と夕の身体が大きく震える。信じられない、そう言いたげな瞳が俺の視線とかち合い、首を振りながら否定をされる。確かに夕のものは見る度にパンパンに膨れ上がり、限度を表現するかの様にピクピクと筋が浮かび上がり始めている。
確かに限界だな。
流石に無理をさせすぎても今後同じような状況で学ばれて無茶が出来なくなってしまえば、それはそれで困る。何の情報も無いこのまっさらな時だからこそ程々に控えるのが今後の為にもなるのかもな。
⋯⋯⋯仕方がない。
無理だと言われるのならそれはそれで大目に見てやる事にする。夕のものに触れていた片手をパッ、と離す事で解放してやり、欲を塞き止めている指先の力も少しずつ抜いていく。
再び互いのものを包み込む様にギュッ、と両手で力強く握り合わせては、欲の解放へと向けて俺のものを夕に力強く擦り付けながら、腰を揺らし続けていく。
「ンんっ!!は、ぁあ!も、イくっ⋯!!ぜん、ぶ⋯出る、!!」
「ッ⋯⋯好きなだけ、出せっ⋯⋯!」
漸く待ち詫びた解放を目の前にして控えめに抑えられていた夕の声からは余裕が無くなり、やがて俺自身の思考も解放に向けて快楽に支配されていく。待ち焦がれた絶頂を迎える様に、不意に夕の両腕が俺の首元に回され唇同士が荒々しく塞がれる。その口付けに答えながら、やがて一瞬だけ思考が飛んだその瞬間、びくり、と大きく身体が震えてほぼ同時に放たれる二人分の白い液体。
一人の時とはまるで違う、濃い快楽が全身を伝い頭の先からつま先まで一気に駆け巡っていく。身体の芯から痺れる様な強い快感に浸りながら、乱れた息を漏らして夕の胸元に身体を寄せるとそのまま力を抜いて呼吸が整うのを待って。
「っ、は…ぁ……服、汚れちゃったわ」
「……だから脱ごうって言ったのにぃ…」
「⋯シーツじゃないだけマシだろ。汚れたら洗いに行くのとか面倒」
放たれた精液の着地地点は見事に互いの衣服の上で。ベタベタと液体で汚れた衣服に「あーあ」と肩を落とす夕を目の前に、まあ、ベッドじゃないだけ楽だと妥協案を伝える。
そんな事よりも今は動きたくないってのが一番の理由だけどな。
達した余韻でぽかぽかと暖かな身体に冷えた室内がなんとも心地の良く、今はとにかくゆっくりして居たい。後のことは後で考えれば良い。
だが、そんな余韻も関係がないとばかりにゴソゴソと互いの下腹部に伸ばされる夕の腕。放たれた液を拭い取る様に何度も丁寧に自分の指先に絡めるその場面を視界に捉えて確認しながら、何事だとその行方を見守り。
「⋯⋯⋯何してんの」
「ん〜??⋯ん〜⋯⋯⋯」
明らかに誤魔化された俺の問いかけ。怪訝に眉を寄せながら瞳を細めて何を考えてやがる、と夕の顔を改めて確認すべく顔を上げた矢先、射精後で乱れたままの下着を押し退ける様に目的を持って俺の尻を弄り始める夕の指先。
まさか。反応を示すその隙さえ無く、俺の不満を察してか手早く俺の尻の中に押し込まれてく夕の指先。おいおい、コイツまた勝手に。
流石にそればかりは一旦相談が必要だと咄嗟に身体を起こしながら背後に腕を伸ばしてその動作を止めるべく夕の腕を力強んで引き離せば、鋭い視線を向けて。
「な、に勝手な事してんのお前。ちゃんとその時は話し合うって約束したろ?」
「⋯⋯えぇ?そうだっけ⋯??で、でも!今日は俺が入れたい気分⋯なんだよ。⋯⋯っお願い!絶対優しくするから」
「⋯⋯なら最初からそう言えば良いだろ。お前のやりたいようにさせてやるほどこれは簡単な事じゃねえの」
「っ分かった、から。ちゃんと勉強もしたし、アキに無理は絶対させないから。大丈夫。ゆっくりやるから、一旦俺にやらせて」
普段のヘラヘラとした言動とは違う、物珍しく真剣な夕の言葉に一瞬思考が揺らいでしまう。確かに、別にどっちが良いかなんてこだわりが無いからこそ夕はどうなんだとその意図も一緒に確認してしまいたかったが、「いったんね!いったん!」と俺の下で寝ていた夕の身体が起き上がり、逆に腕を引かれるがまま、今度は俺が俯せで夕の下敷きにされてしまう。
「⋯⋯っ他に体勢なんていくらでもあるだろ馬鹿。他の方法選べよ」
「だって、ちゃんとやったらアキにまた色々文句言われそうだし⋯この方が俺もやりやすいし」
「⋯⋯⋯普通に苦しいだろ」
なんの遠慮もなく俺の腰上に跨ってそのまま行為を進めようとする夕にグチグチと早速口を開けば、その事を指摘されてしまう。⋯⋯まぁ、確かに何も言わない、とか、何も抵抗しない、とかは無いだろう。特にコイツが相手なら。
身動きしようにも体勢的に可動範囲が狭く、どう足掻いても暫くは動けなさそうだと悟る。毎回こうして強引に進められては困る、と今後のことを考えれば考えるほどに頭が痛くなるが、勉強したと公言する位なら身を任せる事も少しは安心出来る⋯⋯⋯いや、全然無理だけど。一旦様子を見てみる事にする。
「………丁寧にやれよ。⋯⋯⋯痛いのは嫌だわ」
「はいよぉ、元からそのつもりだって言ってるじゃん」
調子良く応える夕のご機嫌な口調にうんざりと肩を落とす。その言葉の信憑性なんてどこにあるのやら。
俺の言葉を承諾と捉えたのか、改めて夕の指先が俺の尻の割れ目にピタリと触れ、やがてゆっくりと中に埋められていく。その何とも言えない感覚から息を吐き出して下腹部の異物に眉を寄せる。⋯⋯⋯ほんとに気持ち良くなれんのか?コレが。
「⋯⋯どう?どんな感じ?」
「どんな感じ、って言われて、も……何もわかんねえ…ってしか言えねえわ」
「⋯⋯まあ、まだ指一本入れただけだもんね」
そりゃそうだろ。
俺の答えに対して「ん〜そうかぁ」なんて意外性の含まれた反応を返されてしまえば、余計に反応に困ってしまう。「そんくらい普通に入んだろ。
普段もっとでけえもん出してんだから」とムードも雰囲気もなく答えれば、「そんなこと今はいいの!!」と逆に怒られてしまう。
⋯⋯何なんだほんとに。
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