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※ ふたつの雪だるま 13

とりあえず指を増やす事よりも違和感に慣れる事から先だと夕にしては珍しく真面目に俺の身体を労わってくれている。 「どう?なんか感じる?」 「⋯⋯お前さ、何回それ聞くの?」 「だって大切じゃん!アキの事傷付けたくないし」 「まあ、その気持ちは嬉しいけど。だから別になんともねえって言ってんの」 「そっかぁ⋯じゃあ次ね」 俺の事を労わってくれるのは良いが、何度も何度も同じ事を聞かれてしまえば流石に答えにも飽きてくる。その事を指摘してみれば怒り出す夕の言葉に、分かったからと素直に口を閉じれば俺の余裕気な反応を見て全然大丈夫そうだと判断したのらしく、差し込まれた2本目の指。 そして、そのまま3本目も一緒に。 おいおい、話が全然違うじゃねえか! さすがに指一本分の質量は余裕だとしても、まとめて一気に増やされてしまえばそれは倍、いや、一気に膨れ上がる訳で。ギチギチに無理矢理埋められてく内部の感覚に息を呑めば、流石に我慢ならないと硬く握りしめた拳で背後に居るであろう夕の腰辺りを目掛けて殴打する。そうでもしないとこのアホは止まらないだろうからな。 「っ、い゛!!っ、てえなおいコラ!!今すぐ抜かねえと殴るぞこの馬鹿!!」 「だぁっ!!いてぇ〜…もう殴ってるじゃん!……だっ⋯てえ〜!1本だと全然余裕そうだったから、2本も3本も変わんないんだろうなあって思っちゃったんだもん⋯」 「……普通に考えて変わらない訳ねえだろ。良いからさっさと抜け!」 「も〜ぉ、分かったよ…良い?じゃあ1本だけ!一旦抜くから、大人しくしてて」 「誰のせいだと思ってんだコイツ⋯⋯」 見事にクリーンヒットしたのらしい俺の拳。流石に脇腹は堪えたのだろう、僅かに俺の上に乗っている夕が痛みに耐える為に小さく震える振動が伝わってくる。すぐ調子に乗ってしまうコイツに言い聞かせるにはこうまでしないといけないのだ。 やがて、俺の指示通り渋々と引き抜かれる指の感覚。あくまでも1本だけ、と言い訳を挟む所から、それでもこの行為を続けたい強い意志を感じ取る。 「んじゃあ、また続けるからね。⋯⋯⋯痛かったら、教えて」 「痛くないようにお前が気を付けろ」 一本減るだけでも消えた圧迫感に胸を撫で下ろしつつ、改めて夕に釘を刺して伝えておく。 「はぁい⋯」と小さな返事が背後から聞こえてくる辺り、一応反省はしてるらしい。それなら良いけど。 圧迫感は減ったが、逆に異物感が増している。その慣れない感覚に眉を顰めてなるべく力を抜いて俺の方から夕の指を受け入れる意思で居た方が早く楽になれそうだと悟り、深呼吸を繰り返し重ねながら身体から力を抜く事を意識して。 狭い内部を押し広げる様に動く指先。時々関節部分を曲げて肉壁を爪先で掠めながら刺激を与えられる。 普段の排泄時とは異なる、別の感覚がその度に伝わるような、そうではないような。 未だ掴めぬこの感覚から本当に快楽に変わるのかが疑問で堪らない。いつその時が来ても良い様に、逃していた意識を下腹部へと向けて指先から与えられる刺激に集中して。 「ん〜、そろそろ良さそうかも。なんか、柔らかくなって来た気がする」 「⋯⋯まぁ、別に痛くはねえな。」 「でさ、どう?おしりの中。気持ちいい?」 「まだ、よく分かんねえかも。なんか、変な感覚はずっと有るけど。」 「ふ〜ん?⋯⋯じゃあ、また指増やすよ。力抜いててね」 素直にまだ感覚が掴めてない。そう告げては夕の言葉に合わせて再び増えるのであろう指先の感触に耐えるべく、グッと額を目の前のシーツに押し付けてその時を待つ。⋯⋯が、一向にその時が来ない。 「⋯⋯⋯何?」 「あ〜いや。ちょっと、他に試したい事があって」 その言葉と共に俺の上から腰を上げた夕に腕を掴まれ、身体をひっくり返される。その瞬間に反転した視界の中に映る夕の顔や見慣れた天井、背中に触れるシーツの感触から仰向けに体勢が変わった事を悟る。 「⋯⋯この体勢嫌だって言ってんだけど」 「まあまあ、ちょっとだけ。後でまた俺が変わってあげるから」 俺が下になるのは嫌だと改めてハッキリ伝える。が、この方がやり易いから、とずっとこうしてなきゃならない訳では無い事も一緒に告げられてしまえば、それなら⋯と渋々受け入れる。 俺の足元で胡座をかいて座った夕の足の上に俺の腰が引き寄せられる事で少し浮く様な形で固定された下半身。⋯⋯俺のそこが、夕から全部丸見えなのも納得いかないが⋯⋯まぁそこは我慢所だろう。 「アキのちんこも一緒に触ったげる。そしたら気持ちよくなれそうじゃない?」 「……まあ、それはそうだと思うけど」 体勢を変える間だけ抜かれていた夕の指がまた俺の中に入ってくる。さっきまでとは違う指の本数に再び感じる圧迫感。今回はちゃんと慣らしてくれてたお陰で最初に感じた痛みはなく、少しづつ奥へと挿入されていく。 相変わらず異物感が凄いが、確かに何かを感じ取れそうな気もする。だが、それだけでは俺がイくにはまだ程遠く、全然物足りない。先程までの激しく熱い欲を果たしたばかりの身体ではそう感じ取ってしまうのも無理はないだろう。 俺のモノを掴んで上下に扱かれる新しい感覚。同じ様に中の指も、狭く締め付けてばかりの中を押し広げる様にバラバラに指が動かされ、その度に爪先が何度も中を掠めていく。前後から交互に与えられる刺激に段々とその感覚は前からなのか後ろからなのか、分からなくなるほどに少しずつ快楽が伴ってくる。 意図せず乱れ始める呼吸や、段々と余裕の無くなっていく自分の表情を素直に晒け出す事がどうしても気がかりとなり、顔の上に腕を乗せて自分の視界を覆いながら、与えられる刺激に集中する事にして。 「⋯⋯あ!俺の時はダメだって言ってたくせに顔隠してんのずるい。ちゃんとアキも俺の目見てて!」 「っ、う、るせ…!それとこれと、は話がちが、う…ッ⋯⋯」 「何も違くありません〜。俺もアキも、あの時と同じ立場ですぅ〜」 確かにあの時はそう言って夕の行動を制限させたが、今は違うだろ、と。言い訳がましく言葉を並べるが、まあそう簡単に受け入れてくれはしないだろう事も理解している。ぐいっ、と腕を引き剥がされる事で再び見慣れた天井が目一杯視界に入れば、不貞腐れた夕の表情も同時に視界の中で捉える。⋯⋯⋯気まず。 「⋯⋯⋯なんだ、顔真っ赤っかじゃん。やっぱこっちの方が気持ち良かったでしょ?」 「⋯あんまみるな」 拗ねたり笑ったり、忙しいやつだなと俺の顔ばっか見てくる夕に向けて少しだけ「こっちに来い」と、俺に顔を近付けさせる。素直に近付いてきたその頬を腹いせに摘んで引き伸ばせば「いた〜い!」と、そう告げながらも嬉しそうに笑う夕の笑顔。⋯⋯笑えば笑うほど幼くなるその顔にはどうしても弱くなってしまう。 嘘つけ。と対して力も込めてないその指を解放してやれば、緩く指先で夕の頬を撫でながら柔らかなその感触に瞳を細めて。
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