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※ ふたつの雪だるま 13

でもまあ⋯そんくらいなら。 「夕、お前が好きだ。」 そう一言、はっきりと伝えながら目の前の顎をガッと掴んで上を向かせてしまえば、口許を緩めながら欲望のままに噛み付く様な口付けを。 何度も角度を変えながら、唇を割り裂く様に舌を差し込めば夕の舌を絡め取り互いの舌を合わせて。 その間に何気無く空いた片手で目の前の首に触れながら指先に触れた喉仏辺りをゴリゴリと押す様に撫で、その感触を楽しんで居れば苦しそうに歪む夕の顔。 ─その瞬間、俺の奥底で眠っていた感情がドクン、と溢れ出してしまう。 触れてただけの指先を少しずつ喉元に絡ませて掴んでしまえば、その指先にゆっくりと力を入れていく。 その瞬間、驚いた様に夕の瞳が開かれ喉に触れている俺の腕に夕の手が触れるが、ギリッ、と目の前の瞳を睨み付ける様に鋭い視線を向けてしまえばその腕がぴくりと震え、やがて俺の腕を掴んでいた指先の力が抜けていく。 何度も指先に緩急を付けて喉元を締め付ける間も口付けを止める事は無く、夕の口内に舌先を這わせながらその心地良さを楽しむ。 十分な酸素を求めるかのように夕の口が開かれるが、それさえも全てを覆う様に角度を変えてその唇を咥え込む様に口付けを繰り返して居れば、やがて限度が近いのか苦痛な表情を浮かべている夕の顔が赤く染まり、首筋までほんのりと色が広がっていて。 喉に触れてる指先からドクドク、と速めの脈打ちが伝わり、力なく俺の腕に添えられていただけの夕の指先に力が込められてく。 ──そろそろ、か。 これ以上は夕の身が持たないだろうと判断し、名残惜しくも指先の力を抜いてやれば顎を掴んでいる手はそのままで、目の前の顔を静かに見つめて。 「⋯⋯ッ゛⋯は、ぁあ⋯⋯!はぁ⋯も、っアキ、ッ⋯!!」 「⋯⋯何?」 「くるし゛、っから⋯⋯!死ぬ⋯⋯かと思っ、た⋯⋯」 「そりゃそうだろうな。」 「⋯⋯なあに⋯それえ⋯⋯っ⋯」 口端から伝う唾液を拭う余裕さえないのか、垂れ落ちていくそれに顔を近付けて舌先で拭ってやれば、ぴくりと夕の身体が震える。 荒れた呼吸を繰り返しながら何度も酸素を求める様に開かれる唇を塞ぐ様にわざと口付けを落としていれば、やがて夕の両腕が再び俺の頬を挟む様に触れて、そのまま動きが止められてしまう。今は余裕が無いのらしい。 ⋯⋯仕方がねえな。 素直に夕の顎に添えていた手を離してやれば、漏らされる安堵の息。 「も、お⋯⋯あきのばかぁ⋯⋯」 「⋯⋯の割には元気そうだけどな。お前の下半身は」 「うそっ⋯?!⋯⋯うげえ⋯。なんっか⋯⋯アキのせいでおかしくなっちゃったじゃん⋯」 何だかんだ愚痴は漏らしつつも、さっきからゴリゴリと分かりやすく俺の下で主張している夕のモノを指先で弾いてやれば、信じられないとでも言いたげな顔で自分のチンコを睨み付けている。 コイツの上半身と下半身は別々の生き物なのか? 「⋯っもう良いから。アキに触られたらすぐ反応しちゃうの!俺のチンコは馬鹿だから」 「⋯⋯触る前から勃ってたけどな。」 「そういう事じゃなくてぇ〜⋯⋯俺ちゃんと準備してるんだから、静かに見てて」 むっ、と怒った表情を浮かべられても、今のこいつにはなんの迫力も無い。 やがて珍しく俺よりも先に折れた夕が、ささっと俺から離れてベッド横にあるサイドテーブルに腕を伸ばしながらガサゴソと中から何かを取り出せば、俺に見せつける様にソレを目の前に差し出される。 「これ、ローション。やっぱこう言うのが無いと痛いらしいからさぁ⋯色々調べたんだよね」 「⋯⋯へぇ。そりゃどうも」 目の前に差し出された容器には、ローションと分かりやすくその名が刻み込まれていた。 そう言えば前に色々と調べてる事をペラペラ俺に語ってたっけか。前立腺⋯がどうのこうの。 「⋯⋯でね、付けたり外したりが面倒くさそうだなぁって思って、ゴムはやめた。生が一番気持ちイイらしいし」 「俺が男で良かったな」 「アキだって別に気にしてないでしょ?そういうの。すっごく繊細そうなのに、全然そんな事無いじゃん」 ⋯まあ、それは事実だが。 確かに行為中のゴムの有無がどうのこうのなんて考えもしなかったが、明らかに俺がその考えに及ばない事を指摘されてしまえば話が変わってくる。 ⋯⋯が、悔しくても返す言葉なんて見つかる訳もないが。 ふと、俺に向けてニヤニヤと得意気な笑みを浮かべている夕の視線に気付いてしまう。 「馬鹿にしてんのか?」 「馬鹿になんてしないよ。相変わらず可愛いなぁって思って」 「⋯ヤるならさっさとしろ。ソレ使うんだろ?」 明らかに分かりやすく話を逸らした俺の言葉に対して含み笑いを浮かべている夕の顔をキッ、と睨み付けながら夕の動作を待って居れば、しばらく互いの下半身を見つめた後に少しだけ困った表情を浮かべている事に気付く。 「⋯⋯ねえアキ、ちょっと⋯そこに寝転がってくれる?このままだと難しい、って言うか」 「あ〜、無理」 「無理なことがあるんだぁ⋯」 俺の言葉に対して強引に行動を押し付ける訳でも無く、素直に困惑した表情を浮かべているその反応が面白くて思わず口許が緩んでしまいそうになるが、そこをグッと堪える。 別に本気で抵抗がある訳でも無く、単にコイツの反応を見たいが為の言葉であれば仕方ねえと目の前の夕の肩に手を乗せて腰を浮かせてやれば、膝立ちの状態で行為の続きを促し。 「これで良いだろ」 「俺は全然大丈夫なんだけど。⋯ずっとその体勢キツくないの?」 「別に良い。この方がお前の顔が良く見えるから」 「⋯⋯それもそうだね。もし痛かったら教えて」 やがて夕の手にはローションが垂らされ、ある程度濡らし終えたソレが俺の背後に回される。 中途半端に下がったままの下着の中に夕の指先が潜り込み、尻の割れ目に触れた瞬間、その冷たさにビクリと背が震えてしまう。 「⋯⋯っ⋯相変わらず冷てえ、な。お前の手は」 「ごめんね。コレも思いの外冷たくてさぁ⋯俺の手、キンキンでしょ」 俺に冷えた指先の感覚を知らせるように、もう片方の空いた手が服の隙間から差し込まれてペタリ、と俺の腹部に触れられてしまえばその冷たさにぞわりと全身に鳥肌が立ってしまい、軽く夕の頭をはたいて。 「⋯⋯ガチで寒いわ馬鹿」 「いって⋯、⋯アキはいっつも温かいもんねえ」

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