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※ ふたつの雪だるま 17
身を休めても消えない倦怠感や触れ合う肌の温もりがあまりにも心地良すぎる。動きたくねえな。そう一度感じてしまえば更に重く感じる身体やこのまま怠けてしまいたい、と思考が停止してしまう悪循環。
勿論その気は一切無いのだが、誰かに身を委ねて全部やって貰う事とか出来ねえのかな。なんて一瞬の贅沢な思考を素直に呟いてみる。
自分でやってくれ、その一言さえ有れば何だかスイッチが入りそうな、そんな気がしただけだが。
「………このままだと寝ちゃいそうだわ。あ〜あ⋯風呂まで運ばれて身体も全部綺麗になってりゃ良いのに」
「え?別に良いけどぉ。なに?そんな甘えんぼなアキ初めてかも」
「⋯⋯まぁ、そうか。お前ならそう言っちゃうよな。ただの独り言だわ、自分でその位出来るから」
「…なんで、全部してあげるってば。大丈夫だよ?別に俺だってその位できるし」
全てを人任せに投げ出した言葉を一つ返事で受け入れて貰えてしまえば、呟く相手を間違えていた事に今更ながら気付く。そりゃ喜ぶよな。
どうしてもやりたい、その意思が何を示しているのか判断が出来ないからこそ、素直に身体を預ける事が出来ず。親切心も有るだろうが、大概その裏に隠れてる夕の下心には十分に気付いている。
それならサッサと自分で終わらせてしまえば良いだけ。結果的にそれが原動力として気合いを入れ直すキッカケとなり。
不機嫌に、それともただ触れたいだけの目的か、唇を尖らせながら腰を撫でる夕の腕を掴んで自分の身体から遠ざける。
風呂の前に、先にコイツを抜かなければならない。
まだ中に入ったままの夕のモノを抜いてしまうべく、改めて脱力感で震える腕にムチを入れながら夕の腹部に手を付けば、その軸を支えにゆっくりと腰を浮かせて。
「……ダメダメ。俺がやったげるって言ったじゃん。勝手に動かないで」
「っあ゛⋯⋯ぁ!?⋯お前、急にっ⋯!!おいっ⋯や、めねえと本気で、怒るからな、っ⋯!!」
「ん〜ん、アキが俺に意地悪するのが悪いじゃん。今は俺が怒るばんなの」
むす、と唇を尖らせて俺の行動を止める様に再び掴まれてしまった腰と共に深く挿入され直してしまう夕のモノ。そのまま緩く腰を揺らされ始めてしまえば、引いた筈の快感が再び一瞬で全身を駆け巡り、ずくり、と下半身の疼く感覚に気付く。
グチュリ、と中に注がれた液体が挿入に合わせて僅かな隙間から溢れ出し、太腿を伝って垂れていく感覚。
腰を掴む腕を引き剥がそうとも絶対に譲らない、とばかりに更に肌に食い込む指先。次第に緩やかな挿入が欲を求める様に速度を増していく感覚に気付けば、息を呑み、ふと、夕の顔に視線を移す。今止めなければ結局流されてしまうだろう、快楽に染まり始める思考を強引に引き戻しながら目の前の顔に腕を伸ばす。
指先でなぞる様に輪郭に触れた後、何の前触れも無く鼻先を思いっきり摘んでしまう。そのまま口を開けて唇を覆ってしまえば、もう片方の腕は首を掴み固定させる様にベッドに押し付ける。
徐々に喉元の気道を圧迫する様に指先にも力を込めながら、傷付いた夕の唇の傷の上に歯を立てると遠慮無く噛み付いて何度も空気を奪ってしまう様に口付けを。
「っい゛あ、っぐぁ?!あ、きぃ゛っ⋯!!」
痛みか苦しみか、どちらとも取れる歪んだ表情を浮かべながら俺の腕や顔を夕の腕が引き剥がそうとする度に唇に何度も何度も繰り返し噛み付く。
やがて、大人しく腰の動きを止めた夕の瞳から溢れ出す苦痛の涙や震える身体。まともに呼吸も出来てないだろう事は十分に理解している為、そろそろ良いだろうと全ての指先の力を抜いて顔を離せば、口内に広がる鉄の風味を飲み込んでしまいながら、不味い。と眉を寄せて。
「お前の唇噛み切ってやろうかと思ってたのに、残念。」
「い、たいし苦しいし、っ⋯死ぬかとおもっ、たぁ⋯!も、アキの馬鹿っ⋯!!」
「先に始めたのは夕の方だろ。⋯で、どうすんの?別にその流れに乗ってやっても良いけど、苦しいのとか痛いのとか、好きなの?ならご自由に」
「う゛っ、あ!!も、お良い!お風呂行く!!やんな、いからあ゛っ!!」
もう一度、脅しの意味合いも込めて首に触れたままの指先に力を込めながら、鼻先を摘んでいた指先で唇の傷口を広げる様に、グリグリと押し広げていく。苦痛に歪む口許や再びその瞳に溜まる涙。ゆるりと首を傾げて場に合わぬ穏やかな笑みを向けて見せれば、再び噛み付いてやろうか、と口を開けて距離を詰める。
慌てて首に添えた俺の腕を掴みながら自分の口許を隠す様に手で覆われ否定されてしまえば、そりゃ残念だと大人しく身を引いて。
静かに見下ろす様に、その瞳に向けて表情の無い光を落とした鋭い眼光を向けては、早く抜け。と中の物を示しながら舌打ちを鳴らして。
「どっかの誰かさんのせーでもう俺動けねえわ。指1本動かすのもダルい」
「………俺の肩貸すからさ、一緒にゆっくり行こ?ね?」
俺の表情を伺うかの様に覗き込む夕の顔。結局さっさと自分のモノを抜いて俺を膝に乗せたまま、後ろから抱き抱える様に腹部へと回される腕に身を任せて互いにベッドの縁に座り暫く身体を休める。
怒っている事を理解している筈だが、それでも相変わらず離れる事はしないのだな、と背後の温もりにふと思考を馳せていたのだが結果的にいつまでも変わらない怠さに溜息を吐き出して。
やがて身体の末端から冷えてしまいそうな、部屋のひんやりとした冷気が身を包む感覚に気付けば、いつまでもゆったりとしてる訳にはいかないと夕の提案に甘える事にしては組んでいた足を下ろして立ち上がる俺の動作に合わせ、隣に並ぶ夕の身体に凭れながら寄り添われる様に、風呂場まで向かって。
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