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隠し事 5
おいおいおい、ちょっと待ってよ。
あいつ、どんだけアキにAVを見せたかったんだ?
最初はそのパッケージに驚き気付かなかった紙袋の中身をよくよく観察してみれば、あと2、3本は同じようなものが詰められていた。
そろりと指先で摘むようにそれを改めて中から取りだして全てのパッケージを確認してみると、その全てが同じような内容ばかりで、どれもこれも⋯⋯また⋯激しいものを。
「げえ〜⋯ほんとに趣味悪っ⋯」
そのタイトルには、緊縛だの、SMだの、あとは⋯なんか、おもちゃとか⋯明らかにノーマルとはかけ離れた異様なプレイばかりが強調されている。
こんなのをアキに見せようとしてるとこが1番キモイというか。
⋯⋯もはや下心とかそういう問題を越えてきてるよね。こんなの。
はぁああ〜⋯!!と、つもりにつもった息を吐き出しながらパッケージの文字を視線で追いかけていれば、ふと視界に映った男の人の顔。
色んな玩具で責められて、苦しそうな表情を浮かべているその人の顔に俺の視線は一気に奪われてしまった。
⋯⋯っえ??!
これ、アキにそっくりじゃね?
その雰囲気というか、見た目というか⋯さすがは吉村の趣味だ。そう言えば前に、アキにそっくりのAVを見つけたとかなんとか自慢してたのを思い出した。
くだらないと話を聞く気にもならなかったけど、まさかこれの事を言ってたとは。
あまりにもじーっとそのパッケージを凝視してる俺に流石に疑問を覚えたのか、アキに声をかけられた事ではっ!と我に返る。
「⋯⋯何か気になるもんでもあったのか?」
「いやあ⋯?⋯⋯ただちょっと、見覚えがあるなあって」
「見覚え⋯?お前もこういうもん見てんのか」
「ちがあ〜う!そうじゃなくて。⋯⋯ん〜!やっぱ⋯そうだよね」
アキの問いかけに対して曖昧な言葉を並べながら、手元のパッケージとアキを交互に見つめてそのそっくり具合を確かめてみる。やっぱ、似てるなあ。
「さっきまで捨てるだの騒いでた奴が、今はそれに夢中か?お前も立派なもんだな」
「⋯うっ⋯⋯そ、そりゃあ俺だってそういう年頃ですし?⋯こんなもん⋯⋯何とも思わないけど、でもやっぱ目の前にあったら見ちゃうじゃん」
じーっと何か意味深に俺のことを見つめるアキに対して、下手に誤魔化してもどうせバレるだろうと素直に興味を持ってしまったことを伝える。
だって、⋯アキにそっくりだってなったら話は変わるじゃん。
「⋯⋯アキの部屋って、DVD見れたっけ?」
「⋯⋯、⋯は?⋯自分の部屋で見ろよ」
「えぇ〜?だって1人じゃつまんないじゃん」
「俺はつまんなくねえんだよ」
明らかに不機嫌そうな表情でじろり、と俺のことを睨み付けるアキの顔から、相当嫌そうな雰囲気を感じる。
まあ⋯そりゃあそうだよな。逆にアキがこんなのに興味あったとしても、それはそれで俺が困るし。⋯めちゃくちゃ身勝手な理由だけど、アキにAVは絶対似合わない。いつでも真っ白な状態でいて欲しい。
とは言っても、俺がこれを見たいってだけの理由でアキを部屋から追い出しちゃうのも違う話だし、今から自分の部屋に戻るのもそれはそれで面倒臭い。どうしようかなあ。
「⋯⋯10分だけ。それならどう?」
「それなら見ても見なくても変わんねえだろ」
「全然変わるよ!こんなパッケージだけのものと、動いてるの見るのとじゃ全然違うじゃん」
「ほんとに何なの、お前は。」
「ね、お願いアキ⋯!すぐ、すぐ終わるから!なんなら5分だって良い!」
「⋯⋯⋯、好きにしろ馬鹿」
⋯⋯そうだよね、結局は俺の押しに負けて許してくれるんだもんね。
アキの優しさを利用しちゃう形にはなったけど、それでもこのフツフツと湧き上がる好奇心に俺の自制心が勝てるわけが無かった。アキ関連になると、尚更ね。
───とは言っても、やっぱそうだよねえ〜!!
意気揚々とリビングまで向かったは良いものの、そこには寝室と同様に様々な物が散らばったままの状況が広がっていた。
ゲーム機にソフトやコントローラー、そしてリモコン⋯⋯本当に、何でこうなっちゃったんだろ。
物自体は少ない筈なのに、それが全部表に出ちゃってるんだよなあ。
まあ、幸い片付けなんてAVの片手間に出来ますから。
最早今の俺のモチベーションはこの手の中にあるAVに託されている。早く見たいんだ、俺は⋯っ⋯!!アキの⋯⋯エッチな姿を。
⋯⋯、⋯それは違うな。流石に語弊があるかもしれない。アキに似た人の!!!エッチな姿を。
俺の後に少し遅れてやって来たアキの顔は相変わらず無表情で何を考えてるかは分からないけど、多分、納得してなさそうな雰囲気だけは伝わってくる。
だけど俺がアキの部屋の片付けを手伝ってる以上、強く言い出す事が出来ないのだろう。
今も全部を諦めてソファーの上に乗ってる物を全部下に降ろし、大胆に寝転がっている。
⋯⋯こうしてまた片付ける物が増えてくんだけどね。
まあ、全部やるけどさ。
早速テレビの前に腰を降ろせば、容器の中からDVDを取り出して手早くセットしてしまう。
その間にもちらりとアキを横目で確認してみると、退屈そうに携帯をポチポチと弄っていた。またあのゲームでもやってるんだろうな。
最近ハマってるらしいアプリゲーを事ある毎に開いては、真剣な表情で携帯と向き合うアキの姿は、正直あんまり好きじゃなかった。
携帯ばっかじゃなくて、俺のことを見て欲しい。
⋯⋯って言ったら、すっごい面倒くさそうな顔されるんだろうなあ。分かってるけど、それでもアキが俺以外の事に夢中になるその時間が退屈で仕方がない。
何か良い方法は無いかなあ〜⋯なんて別の考え事をしてる間にいつの間にかDVDの再生が始まってたのらしい。
やがて問答無用で画面全体に映し出される肌色いっぱいの映像に、思わず目を逸らしてしまう。
なんて生々しいんだ⋯!!⋯まあそりゃそうか、そう言うコンテンツなんだもんな。
場面が切り替わる度に気恥しくなってしまう俺を他所に、アキは相変わらず一切興味が無さそうに、退屈そうな表情で携帯画面と睨めっこをしている。
⋯ほんとに俺と同じ年頃の男子なのか⋯⋯?
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