64 / 82

隠し事 6

テレビ画面に大々的に映し出され始めたそれは、一応ストーリー仕立てなのらしい。近所の幼馴染と、兄弟同士で、学校の先生と、など、色んな場面で色んな人に犯されているアキに似てる人。 艶かしいその場面や、喘ぎ声が室内に広がる中、口まであんぐりと空いてしまう程に集中して見てる俺を他所に、一切興味が有りません。と主張するかのようにひたすら携帯ゲームに夢中なアキの姿。 ほんとに俺と同じ年頃の男子か…?なんて疑ってしまう程。 あっという間に一作目を見終わってしまう。正直、めちゃくちゃ良かった。いっそのこと、このままAVを貰っちゃおうかななんてルンルンとした気分で、2作目を手に取り再びデッキの元へ。 セットし終わり、さて、ソファーにでも戻ろうかと背後を振り返ってみれば、じとり、と瞳を細めながら俺の事を見ているアキ。仰向けの体制から身体を横に向けて寝転がった状態のまま、携帯を掴んでいた手をだらり、とぶら下げている。 やがてその表情は鬱陶しそうに俺からテレビ画面へと移されて 「………まだ見んの?お前元気すぎ」 「ん〜?コレ全部見ようかと思ってるけど。もうゲーム終わったの?アキも一緒に見る?」 「……全部?冗談止めろよ、そんなに見たいならお前の部屋に全部持ってけよ。俺はその間飯食ってるから」 「あ〜、確かに。目当てのものも見つかったしねぇ。そろそろ部屋に戻ろっか?それなら良いよ、俺の部屋でも続き見れるし。」 「は?ちゃんと話聞け馬鹿。それ見たいならお前だけ部屋に帰れって意味。俺は興味ねえって言ってんだろ」 明らかに不機嫌な表情で、長い間テレビを独占されてしまうのが迷惑だとソファーまで戻った俺のパーカーのポケットに手を突っ込んで、何かを探す様にがさごそ、と動き回るアキの腕。 あ、そう言えばリモコン奪いぱなしだった。 勿論、すぐにその意図に気付いて身を引きながら距離を取れば、盛大な舌打ちが聞こえて来る。 うわ、めちゃくちゃ機嫌悪くなってるじゃん。でも、絶対に、続きがみたい。見たくて、仕方がない。 「コレで終わるから!!それまで待ってて。それでさ、その後ご飯食べようよ。さっき俺の事誘いに来てたでしょ?」 「………その言葉、覚えてろよちゃんと。それでも終わらなかったら、蹴り飛ばしてでもお前を部屋から追い出してやるからな」 「わ、かったよ。ちゃんと終わる…し、後は俺の部屋で一人の時に見るから」 今すぐにでも飛んできそうなアキの足か、腕か、どっちか分かんないけど、多分、怒ってる時は大体蹴られてる気がする。 身構えながら、一応、ちゃんと約束を交わせばそれで満足したのか、再び仰向けになって携帯画面を見つめるアキの姿を確認する。 ほっ、と胸を撫でおろしながら、少しでも刺激をしないように、とそっと元いた場所に腰を下ろして改めて、テレビ画面に視線を向ける。 既に始まっていたそれは、適当に選んで入れた物だったがどうやら監禁ものだったのらしい。また随分と変態じみた物を好んで見てるんだな、吉村は。 手足を拘束されて、色々と酷い事をされている画面の中。大人のオモチャを突っ込まれたり、無理やりヤられたり。 その苦しそうに歪む表情が、ふと、以前の行為中のアキの表情と重なってしまった。俺のモノを入れる時にめちゃくちゃ苦しそうに、だけど一生懸命全部を咥えこんでくれていたその時の情景がやたら鮮明に、頭の中で映像として蘇ってしまう。 あ、やばいかも。 急いで意識を逸らした時にはもう、既に遅かった。途端に、ずくり、と疼く俺の腰。 意識してしてしまえば、目の前の映像全てが刺激物になってしまった。泣きながらやめてと叫んでいるその姿、別の男の人のモノを口の中に突っ込まれて苦しそうな表情、手足を縛られて自由に動けない姿に目隠しもされてしまえば、それはもう完全にアキでしかない。 正直めちゃくちゃ、好き。 ふと、気になった隣のアキに視線を向けてみれば、いつの間にかその視線もテレビ画面に向けられていた。俺みたいな好意的な視線では無くてあくまでも暇つぶし、のんびりと欠伸までしている。 そんな姿を観察して居れば、俺の視線に気付いたのか、アキと視線が合う。 「お前意外とこう言うの好きなんだな」 「……これ、吉村のだしアイツが好きなんでしょ。俺は………多分、違う、と思うけど…」 「……へえ?まあ、どうでも良いけど。そう言えば、鍵。一応お前の部屋のもんだし返しとくわ。」 「あ、そうだった。アキ無くしちゃいそうだしね。ありがと、預かっとく」 この部屋の有様、物を何処に置いたか忘れちゃうとことか、まあ、確かに心配な所ではある。素直にその事を伝えながらアキに手を伸ばせば、気に入らない、と言った様に、身体を起こしたアキの蹴りが、俺の二の腕にヒットしてしまう。 幸い加減はしてくれていた様で痛みもそんなに無ければ、そのまま「トイレ」と立ち上がり、行ってしまったアキの後ろ姿を見送った後、再び視線はテレビ画面へ。 うわっ、今の表情まじでヤバい。ガンガンに掘られて最後射精をしてしまったアキ似の男の人の顔と、また、アキの表情が重なってしまう。イく時の顔、ほんとにエロ過ぎて堪らないんだよなぁ。あ〜…アキとシたいなぁ。 溶けた脳内のまま、ぼんやりとテレビ画面を見つめる俺。多分、凄い表情をしてそうだが、まあ、それは仕方無い。 トイレからアキが戻って来た事に気付く。腹減った、なんてお腹を擦りながら、俺の隣に座る。そのまま又寝るのかな、と少し端に身体を寄せてスペースを空けるが、中々変わらない体勢。 あれ?と改めてアキの姿を確認してみれば、じっと俺の顔を見られていた事に気付く。 「……わ、ビックリした。……なに…?」 「…お前、凄い顔してるけど。なんか、赤くなってない?」 「うそ……ほんとに?…なんか、興奮しちゃってたのかも」 「……やっぱお前吉村と趣味似てんじゃねえの」 指摘されるがままに自分の頬に触れる。確かに、普段よりも温かい様な、なんか少し逆上せた様な、そんな感覚はあるかもしれない。意味ありげに、俺の目からそのまま流れる様に下半身にその視線が移れば、吊られて俺も視線を下げてみる。わ、俺のちんこ健全だわ。 明らかにズボンを押し上げて主張をしている欲望まみれの太い棒。そりゃ、こうなるよなぁ。 「……お前さ、好きな人の前で別の男のヤってる姿見て、よくそんなにデカく出来たよな」 「違う…よアキ。これはさ、そう言うものじゃないから」 「明らかにそれ以外何もねえだろ。俺が優しい奴で良かったなあ?」 ソファーの背もたれに深く身体を埋めながら、ツン、とした表情で片側の口許をくいっと歪めながら笑うその顔は正に悪役そのもの。 何か意味深に、告げられた言葉は確かにあながち間違いでは無い。 「……顔はめちゃくちゃ怖いけど。何、嫉妬?ヤキモチしてくれてるの?アキ以外を見てたから?…っ可愛すぎ」 「…うざすぎ。別になんも思ってねえわ」 照れ隠しなのか、どうかは分かんないけどまた仏頂面に戻ってしまったアキの顔。 ……照れて…なんかいないな、いや、逆に怒ってるわ。もう一回、怒り任せに殴られた俺の腕に対する当たりが強すぎる。バカ痛え。 でも、俺は画面越しにアキの事しか見えてなくて正直目の前の男の人はどうでも良い。その事を説明したいけど、多分、言ったら絶対怒られる。今、ではないな。 うまく言葉が見つからなくて、それでも少なからずアキの瞳の中には怒りで誤魔化しながらも、ほんの少しだけは、気になる。そんな感情が見え隠れしていて。寧ろ何も感じて無ければ一々俺に突っかかる事なんて無かったのかもしれないけど。

ともだちにシェアしよう!