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※隠し事 15

(アキ side) くっっそ痛え。夕の言葉に弾かれる様にして入れてはみたものの、全く解れてない場所に無理矢理捩じ込まないといけない行為はただの苦痛でしか無い。 確かに、夕とやる事はやった。それで適当に中を弄ってれば入るものだと思っていたが、そうでは無かったのらしい。まだ俺の中には夕の先端までしか入ってない。それなのに、この痛み。 このまま全部を入れてしまいたい気持ちでは有るが、自力では難しい現状にどうしたものかと俯き思考を巡らせて。ふと、そんな俺の状況に待ちきれない、と準備の不十分な内部を強引に裂かれる様に緩やかに動き出す夕の腰。慌ててその腰を押さえ付ける様に腹部に両手をつき、じとりと目の前の顔を睨み付けて。 「っ、い゛…!!お、まえ勝手に動くなっ…!!」 「……ほらねぇ、やっぱり痛いんでしょ?ちゃんとやらなきゃ1回ヤっただけじゃ広がんないよ」 「ん、なの……やってみなきゃ分かんねえ、だろ」 「じゃあ、もいっかい動いても良いの??アキが痛くても良いって言うなら、別に俺は気にならないけど」 「……止めろ、馬鹿」 動かない様に、と腹部を押さえ付けている分余計な動作は止める事が出来るが、無理に動かれてしまえば中のモノは再び奥深くへと入ってしまうだろう。それだけは避けたい。 慰めてやる、その名目で始めた行為だが、殆ど嫉妬や怒り任せ、自分本位なこの行動を今更引き返す事も出来ず。多分、夕も気付いてはいるだろうが、何も告げること無く俺の言葉通りに身を任せている。……どう収拾つけるべきか。 「は〜あ!!もう俺十分我慢したと思いますけどねぇ??そろそろ手も痺れて痛いし、明日起きた時腫れてたらアキは俺の看病までしてくれるのかなぁ」 「そんな事……ねえんじゃないの?そんなに強く縛った覚えないし」 「いや、めちゃくちゃ痛いよ。俺我慢強い方だと思ってるからまだ平気だけど、多分そろそろ血止まりそぉ」 「………は?」 確かに力任せに縛ってしまったが、鬱血してしまう程に強く結んだ覚えはない。はず。 確かな確証も無く、そう言われてしまえば不安が過ってしまう。挿入途中の何とも不格好な姿ではあるが、それよりも夕の腕の確認の方が先だと身体を起こす様に告げては夕の肩越しに背後を覗き込んで。 縛られた腕が身体の下敷きになってしまっていたからか、確かに指先まで真っ赤ではある。でも、その前に目立つ手の甲の傷。自分でやったのだろうか、血が滲む程の引っ掻き傷にその方が問題だろうと顔を覗き込んで。 「……自分でやったのか?」 「なんの事?俺の手を縛ったのはアキでしょぉ?」 「んな事分かってるわ。自分で、自分の手を引っ掻いたのかって聞いてんの」 「……あ〜?…よく覚えてないけど、多分…アキがずっと俺の事焦らすから。知らないうちに力入ってたみたい」 俺の行動が原因だと、真っ直ぐに伝えられてしまえば流石に返す言葉が見つからず。「だから痛かったのかぁ」なんて呑気にモゾモゾと夕が手を動かす度に、出来たばかりの傷から血が滲み手の甲を染めている。 相変わらず自分自身に傷を付ける事に躊躇の無い行為がこんな場面でも出てしまうのか、と溜息を吐き出し。このまま放ってしまえば更に状況は悪化する一方だろう、と仕方無しに夕の手を結んでいたネクタイを解いてやり、ベッドサイドに投げ捨てて。 「……ったく…ほんとに油断も隙もねえわ。…大人しくしてろよ」 「そんなカッコしたアキが目の前に居るのに、大人しく出来ると思う?無理じゃない?」 「勝手に触んな、って言ってんの。それが出来ないならもうお前とは今後一切ヤんねえから。残念」 わざとらしく肩を竦めながら中に入れたままの夕のモノを引き抜いてしまおうかと腰を浮かせば、大人しくするから、と慌てて俺の身体に抱きつく夕の姿。やらない、と確定されてしまう事が不安なのか普段よりも情けなく下がる眉や、元々垂れた瞳が更にふにゃりと緩めば何と言うか、まぁ、母性が擽られるというか。男だけど。

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