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※隠し事 16

改めて、大人しく俺に抱き着いたまま動く気配の無い夕の姿。何とも動きずらい体勢では有るが、目の前でじろじろと俺の身体を見ていた視線が外れるだけでも事は進めやすい。 今更抜いて再び中を解し直すのも面倒だし、何よりもさっさと夕のモノを中に埋め込んで中途半端な快楽を明確なモノにしてしまいたいのも本音ではある。俺の胸に顔を埋めたまま動かない夕の両肩に手を添えてはそれを支えとし、一つ深呼吸を。 最大限に息を吐き出して身体の力をなるべく全て抜き切る様に意識を集中させては、ゆっくりと、時間を掛けながらゆっくりと夕のモノを中に埋め込んで。 「………っ、入った、んじゃねえ…の?」 「ん、ちゃんと全部入ってるよぉ。よく頑張ったねぇ」 「……ちょ、…っと…たんま。一回休憩させてくれ」 「えぇ…?初めての時もそうだったけど、アキ休憩するの多くなぁい?もっと頑張ってよ」 「仕方ねえだろ?体力持ってかれんだよ、ヤるのも」 俺の言葉通り、大人しく待ち続けてくれていた夕からの言葉で全てを挿入し終えた事の再確認が出来ればほっと胸を撫で下ろし。 なるべく痛覚が身体に響かない様にと、丁寧に、それはもうゆっくりと行った挿入。それだけでもプルプルと震える内腿や気を張り巡らせすぎてすり減った精神のまま続きを行うには早々に意識が飛んでしまいそうだ、と夕の肩に顔を埋めては詰まった呼吸を吐き出して。 グチグチと不満が聞こえる気もするが、聞こえないフリをと沈黙を貫けばやがて諦めたのか、盛大なため息の後に俺の身体をもう一度、ぎゅっと抱き締め直して暇潰しに、とベタベタ足や尻を撫で回す夕の手。 まあ、それで気が済むなら何も構わないが。 だいぶ夕のものも中に馴染み、痛覚や圧迫感が引いてしまえば今度は前回たっぷりと与えられた快楽を思い出すかの様にドクドクと脈打つ内部。深く埋め込めれているソレが丁度前立腺を掠める場所に留まっている事を知って居れば、少しでも身を動かす事であの心地良い快感を味わう事が出来るのだろう、と気付いてしまうだけで段々と期待値が高まり、そうなればさっさと行為を始めてしまいたいのが本音で。 ふう、と小さく息を吐き出して夕の肩に埋めていた顔を起こせば改めて真正面からじっ、とその顔を見つめた後、吸い寄せられるかの様にその唇へと口付けを落としながらゆるり、と快楽を求める様に緩やかに腰を動かし始めて。 「………っん…。やっ、ぱアキの中、あったかくてすごく気持ちいいや。…もっと、動いても良いけど…ぉ…」 「初めから、激しくしたら痛え…っだろ…こんくらいで、今は丁度いいから、っ…」 口では何とでも言いながらも、毎回俺のペースに合わせて身を任せてくれる事を知っている。だからこそ行為の中で快楽を拾い集めやすく、回数を重ねる度に夢中になってしまう未来も見えてしまうが。 まあ、正直ヤる事自体に嫌悪感等は無く、寧ろ好意的な方なのだろう、とここ数日で密かに気付いてしまった事ではあるが。 緩やかに、腰を動かしながら求められるがままに何度も互いに口付けを交わしていく。夕の片手がやがて俺の腰から、脇腹を指先で擽り腹部を撫でる様に這い上がれば辿り着いた先の胸の尖りを爪先で軽く弾かれる感覚にひくり、と身が震え、そのまま優しく掌全体で揉み込まれる様に転がされる。 何度も捏ねくり回した後に指先でもう一度弾かれてしまえば、与えられる刺激で膨れたそこに感覚が集中し、ぴりり、と痺れる様な心地良い快楽が生まれる。俺の口から離れた夕の顔が、空いたもう片方の胸元に埋まれば指先とは違うぬるりとした舌先の暖かい感触が胸を這い回り、新たな感覚が生まれる度に耐えきれずに熱い吐息が俺の口から溢れ、無意識の内に緩やかに動いてた筈の俺の腰は与えられる快楽に合わせて段々と更なる快感を求めて挿入の回数を増やしていき、夕のモノを奥へ奥へと誘い込む様に何度も中を締め付けて。 「は……あっ…そ、こばっか…じゃなくて腰も、動かせよ…そろそろ…っ…!」 「もう、良いの?ずっと待って、たけど…アキが、大丈夫なら…」 俺ばかりが動いていては均等な快楽しか探れない事を物足りなく感じてしまえば、律儀に俺の言葉を待ち大人しくしていたのらしい夕の問いかけに、こくり、と頷いてなるべく動き易い様に、と中の力を抜く様に深く深呼吸を繰り返し無意識の内に夕を求めて締め付けてしまわない様に意識を逸らし。 俺の胸元から、腰を支える様に添えられた夕の手に俺の手を重ねてはその指先をぎゅっと握り締めながら、確かに覚悟は決めたが僅かに走る緊張感から気を逸らす様に深呼吸をしながら、緩やかに下から突き上げる様に始まる別方向からの刺激にぐ、っと息を呑み、瞳を伏せて額を夕の肩に乗せると与えられる快楽全てを受け入れる様に、神経を集中させて。 「ね、アキ。痛くない?大丈夫?」 「へーき…だから、好きに動いてろ。今度は、お前の番だから」 「……ほんとに、アキって男前だよねぇ。そんなとこが大好きなんだけど、っ……ずっと我慢してたから、多分余裕無いよ俺」 男前、過去にも何度か表現されたその言葉に自覚が無ければどの行為の、どの部分がそれを指し示しているのか、しかも行為中で有れば余計訳が分からないと眉を寄せて目の前の夕に視線を合わせて。 だが、視線の合わさったその瞳は想像以上に欲に埋もれていて、火照った頬や緩やかに弧を描き緩む口許、真っ直ぐに俺の事を捉える瞳から視線を逸らす事が出来ず、欲を隠しもせず表現したその表情に釘付けになって居れば、急に反転した視界の中の景色。 突然の浮遊感にびくり、と驚きを隠す事も出来ず短めの悲鳴を上げてしまえば、どうやら背後に押し倒されただけの様で、背中から伝わる柔らかな感触に詰まった息を吐き出して、ほっと胸を撫で下ろし。

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