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※隠し事 17

「っ……お、まえさ…!急に止めろよ、心臓止まるかと思ったわ」 「たまには俺にもアキの事見下ろさせてよ。どんな景色か、見てみたいの」 「……別に、良いけど…あんま、ジロジロ見ても面白いもんなんてねえぞ」 「面白いじゃなくて可愛い、でしょぉ?ま、良いから今度は俺の下で沢山気持ち良くなってね?」 ふわり、と場に合わない柔らかな表情で笑みを浮かべたまま告げられた言葉は欲に塗れた内容で。 よくもまあ、そんな爽やかな顔で言えたもんだ、と瞳を細めて視線を合わせて居れば、否定の無い事を良しとし緩やかな速度で俺の中を掻き回し始める夕のもの。 見下ろされながらの行為に何処か落ち着かず、夕の首元に両腕を伸ばしてその顔を引き寄せる様に距離を縮めてしまえばその違和感を掻き消す様に口付けを。大人しくその誘いに応えてくれた夕の舌がぬるり、と俺の唇を割り口内に差し込まれては口内を探る様に這うその舌先に合わせて俺の舌を絡め合って。 その間にも緩やかな挿入は続き、やがて中に夕のものが馴染めば奥を突き上げる様に何度も深く差し込まれ、慣らす為の行為から快楽を探る為の動作に変われば意図的に前立腺を押し上げながら捩じ込まれるその行動にビクリと身体が震え。 「これ、気持ちいいでしょ?アキの顔が、とろんってしてる」 「そ、こばっかやったら、最後までもたねえ、からなっ…俺…!」 「分かってるって、やるなら長く楽しみたいもんねぇ?」 口付けの合間に盛れる声を懸命に呑み込みながら中を突かれる度にそこからじんわりと広がる快楽に身を委ねていたが、時々更に奥を押し開く様にググッ、と深く腰を押し込まれてしまえば初めの方こそ偶然だろう、と耐えて居たがそれを良しとして捉えられてしまったのだろうか。 やがてガツガツと遠慮無く奥深くばかりを強引に何度も突かれてしまえば堪らず顔を逸らして口付けを拒み、目の前の夕の頬をガッ、と挟む様に片手で掴むとぎっと眉を寄せて分かり易く不満気な表情を浮かべて見せて。 「っ、お………い。お前、んな深く突っ込まれたら痛え、って分かんねえの?」 「……ええ?だって、前立腺と、あとはもっと奥深くに気持ちイイとこがあるんだよって吉村が言ってたから。やってみようかなぁって」 「……普段から変なモンしか見てねえからそんな知識ばっか知ってんだろ。んな訳あるか馬鹿」 「……気持ち良くないの?これ。難しいらしいけど、そこまでちんこ入れてぐちゃぐちゃにしたら、誰でもメスイキしちゃってセックス依存症になっちゃうんだよ、ってなんか前熱く語ってたけど」 「………お前ら普段仲悪い癖にそう言う会話の時だけはイキイキしてるよな、いっつも」 なるほど。これ以上吉村に変な知恵入れは止めろと釘を刺さなければ、コイツは全部言われるがままに素直に試すだろう、と新たな問題点に溢れ出る溜息を止めることが出来ず。掴んでいた夕の頬を解放しては、とにかく止めろ。そう告げて張り詰めていた息をはぁと吐き出すが、当の本人はまだ納得出来てない、とばかりに緩く首を振る動作。 一体何なんだとその意図を探るべく口を開いた夕の言葉を待つ事にし 「でさ、多分初めの内は痛くて抵抗されるかもだけど、大丈夫だって安心させながら続ける事が大事なんだって。だから、アキも安心して俺に身を任せてよ」 「…………は?」 「その内絶対気持ち良くなるし、アキもその方が良いってなるかもしんないしさぁ?色んな事試してみようよ」 「ん、なの別にどうだって良いわ!!っ…!お、い!!」 あいつはどうしてこんなにも厄介事の種ばかりばら蒔いていくのだろうかと思考を悩ませて居たのだが、痛いのも最初だけみたいだし、とその後に続く不穏な言葉に一気に悩みは吹き飛び、同時に思考を目の前の現実に戻さなければいけなくなり。 身の危険を感じはしたが、それを止めてしまう前に再び夕の手がしっかりと俺の腰を掴み、強引に奥ばかりを力強く突き始めてしまえば無理に押し開かれる痛覚に眉を寄せて、唇を噛み締めて。 「は、あ゛っ、い゛…!!お、まえ、マジでっ…!!ふざけんな、っ…!!」 「良いからいいから、俺に任せてなって」 俺の腰を固定する夕の腕だけでも何とか剥がれないか、と力を入れてみるが、絶対離さない、とばかりに更に力を込められてしまえばどうしようも無く、律儀に吉村から伝えられた言葉通りに行為を進めているのだろう、「もう少しで良くなるから」「大丈夫大丈夫」と抵抗する度に掛けられる鬱陶しい言葉の数々に対して対抗する言葉を口にするのも段々と怠く、面倒で。 執拗に奥ばかりを突くその行動から止める意志の無さを感じ取れば今は何をしても聞く耳を持たないだろう、と諦める事しか出来なければ絶対に一発でも二発でも、いや、何十発でも良いから吉村を殴ってやらなければ気が済まないと途方も無い怒りをフツフツと湧き上がらせて。 「ねえ、アキ。まだ気持ち良くない?だいぶ痛いのは無くなってきたでしょ?」 「………っお前、さ……気持ち良さそうに見えるのか?俺の顔が。やっぱ、我慢してたけど一回お前の事を殴らねえと気が済まねえわ。おい、ツラ貸せ」 「……や、だよ。絶対鼻血出そうな位殴りそうな顔してんだもん。………っ分かったよぉ…今日は諦めるから、これで許して」 「今日は、って何だよ。今後が有ると思うな、っ……?!ま、たお前は急にっ……!!」 何度も行われる深い挿入に必死で耐えていれば、やがて俺の顔を覗き込む様に問われる言葉。 やっと繰り返し行われてた挿入が止めば張り詰めていた息を吐き出しながら、行き場のない怒りを発散させる為に鋭い視線と共に目の前の夕の胸元の服をギュッと握り締めて俺の元に引き寄せよう、と力を入れた瞬間、すぐに察したのか、その腕を掴まれて剥がされてしまえば盛大に舌打ちを一つ。 だが、俺の機嫌の悪さからやっと空気を読んでくれたのらしく、再び怒りを向けられる前にと再び始まった挿入は今までの無理な挿入とは異なり、緩やかに俺に快楽を与える為だけの、ゆったりとした心地の良いものであれば怒り任せに告げていた言葉は詰まり、溢れ出そうな吐息を誤魔化すべく口を閉じて。 それが続け様に前立腺を掠めていけば気を抜いていた場所への刺激に身体は大きく揺れ、待ち望んでいた快楽に萎えかけていた俺のモノも一気に元気を取り戻していて。それを良しとしたのか、苦痛でしか無かった挿入から一気に快楽だけの行為となれば、与えられるがままに身を委ねて。 「ん〜、やっぱさっきのずっと痛かったんだ。ごめんねぇ?」 「っだからずっと、言ってただろ、がっ…」 「…今のアキの顔の方が、柔らかいしすんごい気持ち良さそうだもん。……この方が中でぎゅってしてくれるから俺も気持ちいい、し。…やり直し、って事で」 調子良く告げられる言葉。普段なら口喧嘩でも始まってしまう場面だろうが、今回ばかりは強引に最後まで進めず、俺の表情に気付いて行為を切り替え、待ち望んでいた快楽を与えてくれた事だけで良し、とする事に。そもそも、今の心地良さを逃したくはないのが本音だが。 夕の言葉通りに中でモノを締め付けてやればびくりと震える中のモノと、夕の身体。 今まで与えられなかった刺激が流れ込む様に体内を駆け巡り、何度も快楽として刻み込まれていけばやがて俺のものがピン、と主張し始め、欲の高まりを表すかの様にそこに熱が集中し始めるのを感じ取り。

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