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新しい悩み事 1
「⋯⋯ッ⋯!痛え、って何回も言ってんだろうが!!」
しん、と静まり返っていたハズの室内で突然響き渡るアキの怒声と、俺の顔面に広がる衝撃、そして少しだけ遅れてやってきた激痛。その最中で俺の視界に映るのは鬼の様な形相で怒るアキの顔だった。
──どうしてこんな事になってしまったのか。
簡単に事の発端を思い返してみる。
いつもの様に俺がアキに誘い掛けてみた結果、それが上手くいって始まったエッチ。
俺のをアキの中にいれて、しばらく快楽を楽しんでたけどやっぱりなんか物足りなかった。
確か、もっと奥までいけたはず。
アキの中に深々と挿入してく度、「痛えからやめろ」と行動を止められてしまう。
⋯前はあんなに気持ちよさそうにしてたのに。
もっと、⋯⋯アキがぐちゃぐちゃにならないと駄目なのかなぁ。
ならアキの気が抜けた所で、と何度もタイミングを見計らっては挑戦してみた。
そうしてる内に、段々とアキの声に怒りの色が含まれてる事に気づいてしまう。
だけど、それとなく誤魔化してしまえば⋯⋯。
その一心でググッ!!と奥に突っ込んでみた瞬間、悲劇は起きてしまった。
思いっきり、グーパンで俺の顔をアキが殴ったのだ。しかも、加減も無く。
っもうそりゃ!悲鳴が出るくらい痛かった。
ノックアウト状態でベッドに突っ伏したまま動かない俺を他所にさっさと俺のを中から抜いてしまったアキが、まだ怒り足りないのかブツブツと呟いてる言葉に耳を傾けてみる。
「大人しくしてりゃ勝手な事ばっかやりやがって、クソが」
「ぜっってえ許さねえから」
「マジで痛えわ。最悪」
「そこで一生這いつくばってろ」
聞こえてくる言葉はどれも強いトゲトゲばっかの内容だった。ほんとに口が悪いんだから⋯。
「⋯⋯っあ⋯や、ば⋯ぁ⋯!鼻血⋯!!血、でてる⋯!」
流石に先を急ぎすぎた俺が悪かったのかもしれないな。
素直に謝ろうと顔を上げたその瞬間、鼻からたらり、と生暖かい液体が流れ落ちる感覚に気付いてしまう。
その液体を軽く指先で拭って確認してみる。
そこには真っ赤な血が俺の指先にべったりと付いてしまっていた。
慌ててアキにその事を伝えてみるけど、⋯⋯一切反応が無い。
あれっ、⋯おかしい⋯⋯なぁ。
いつもだったら俺のこと気にかけてくれるのに
「あ、あき⋯?俺鼻血、出ちゃった⋯」
「だから何?シーツまで汚すんじゃねえぞ」
「⋯⋯俺、鼻血出ちゃっ⋯た、から⋯⋯」
「んなの自分でどうにかしろよ」
俺のことを睨み付けながら告げられた言葉。
こんなに素っ気ないアキ、今までの付き合いの中で初めてかも⋯しれない。殴られた事も初めてだけど。
でも、確かに俺のした事は自業自得で間違いが無かった。
⋯⋯っ、⋯仕方ない。
しょぼん、と肩を落としたままサイドテーブルに腕を伸ばしてティッシュ箱を取れば、鼻を押さえ付けて鼻血を拭っていく。
その間に立ち上がったアキが、さっさと部屋を出て行ってしまった。
俺の静止の声は勿論届ける事が出来ずに、慌てて差し出した腕は宙をもがき、そして再びベッドの上にストン、と落ちてしまう。
「⋯⋯久しぶりにちゃんと怒らせちゃったなぁ」
はぁあ〜⋯⋯と力なく溜息を吐き出しながらしばらくの間鼻血が引く感覚を待ち続けた後、ようやくその鼻血が止まったタイミングで大量に汚してしまったティッシュを抱えてベッドから降りると、リビングまで向かってみる。
「⋯⋯あき、ごめんね⋯俺が悪かっ⋯?!⋯すっご⋯え??⋯大胆⋯だぁ⋯」
「ジロジロ見てんじゃねえよ。」
「えぇ〜⋯?だって、全裸のアキが目の前に居たらそりゃ⋯見ちゃう⋯って⋯」
そろり、と覗いてみたリビングではアキが全裸で腕を組みながら、シンクを背にして堂々と水を飲んでいた。
なんか⋯ほんっとに何から何まで大胆すぎない?
じろりと睨まれるがままにびくりと震える俺の身体。取り敢えず腕の中に抱えていたティッシュを一気にゴミ箱の中に押し込んでしまえば俺も水を飲む為にいそいそとコップの準備をする。
全裸の2人が一緒に水飲む光景なんて、傍から見たらどんな景色なんだろうなぁ。
「⋯⋯おい、血。」
「⋯っえ?⋯あぁ〜⋯またぁ⋯」
一度は治まったハズの鼻血がまた俺の鼻からたらり、と垂れている事にアキの指摘で気付く。
もう一気に水を飲んでしまってから、ソファーの手前にあるテーブルまで小走りで向かえばその場にしゃがみ込んで手に取ったティッシュで鼻を押え付ける。
なんか⋯俺ってほんと情けないなぁ。
しゃがんだ状態のまま、自分の膝を抱き抱える様にしてぎゅっと身体を小さく丸めてしまう。
そういえばすっかり忘れてたけど、普通に寒い。
それでも鼻血が治まるまでじっと耐えることしか出来ないこの時間に寂しさを覚えてしまう。
どうしようも出来ないこの状況でぼんやりと遠くを見つめてたその時、「なあ」と俺を呼び掛けるアキの声で咄嗟に我に返り、俯いてた顔を上げてアキに視線を向ける。
「な、なに?」
「⋯⋯お前が俺に入れられる側じゃ駄目な訳?」
「⋯⋯へ?」
「だから、お前に入れさせろって言ってんの」
突然の言葉が理解出来ず、キョトン、とした顔でアキの事を見つめることしか出来なかった。
アキが、俺に⋯入れる⋯⋯⋯?何⋯を⋯⋯、⋯って、あぁそっか。要するに、俺がアキのちんこをお尻に入れなきゃいけないのか。
っなんで急に?!
「俺に入れて⋯も、何も楽しくないと思うけど⋯」
「楽しさ目的でヤる奴なんかいねえだろ。そもそも、なんで俺ばっかがお前に入れられなきゃなんねえ訳??」
「ん〜⋯、⋯気持ちいい⋯から?」
「それはお前の事情だろうが」
「まあそれはそうなんだけどねぇ⋯」
アキが俺に入れる。
正直今まではアキが快く受け入れてたから俺もそれに甘えてただけで、俺が受け入れる側の対象相手になってしまうとなれば話が変わってくる。
⋯⋯だってどう見てもアキのってデカイんだも
ん。
それを分かってる上で尻込みしちゃうのは、仕方無い事じゃない?
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