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新しい悩み事 5

──⋯ポタッ アキと二人でイった後の気持ち良さに身体を委ねたままゆったりとした時を過ごしてたその時、俺の鼻から身に覚えのあるあの暖かな液体が溢れ、そして俺のほっぺたを伝い落ちていく感覚に気が付いてしまう。 ⋯⋯─もしかして。 「あ、きっ⋯⋯や、ばい、かも」 「⋯⋯な、んだ⋯⋯っ、お前また⋯!!」 むくり、と俺の上から起き上がったアキが俺の顔を見た瞬間のその表情で、俺に何が起きてるのか瞬時に察してしまった。 咄嗟にサイドテーブルに腕を伸ばしたアキの手にはティッシュが握り締められ、それを俺の鼻に押し当てられていく。 「⋯ヤった後に鼻血出す奴なんて居るんだな」 「多分体が温かくなっちゃった、から⋯⋯せっかく止まったのにぃ⋯」 こうなっちゃうとしばらく止まらなくなっちゃうんだよなぁ。 俺の鼻を抑えながらどこか心配そうな表情を浮かべているアキの表情が俺の視界に映しだされる。 あっ⋯今度はちゃんと心配してくれる⋯んだ。 やっぱ、何だかんだ俺のことを気に掛けてくれてたんだなぁ。 ⋯⋯久しぶりだなぁ、この感覚。 いつも俺のことを心配してくれて、俺の事だけを見てくれるアキの瞳の中に映る俺の姿。 俺の事でいっぱいいっぱいなアキの優しさがとっても心地良くて、大好きだった⋯んだよなぁ。 今でもその気持ちに変わりはないんだけどね。 「⋯⋯もういいんじゃない⋯?」 「⋯まあ。」 結局あれから中々止まらない俺の鼻血の具合を見ながらせっせとお風呂に入って、着替えて、何だかんだゆっくり過ごしていく。 もう大丈夫そうだと俺がティッシュを手放す度に垂れ落ちていく鼻血をアキが拭いてくれて、「離すな」と念を押すようにアキが代わりに俺の鼻を抑えてくれる。 最後にアキがじっ⋯⋯と俺の顔を見ながら確認してくれた頃には鼻血も治まって、漸く俺の身体も自由になる。 離すな、だの、動くな。だの、じっとしてるのも大変なんだから⋯ ──ピコン アキがティッシュを片付けに行ってくれてる間に、俺の傍に置かれてたアキの携帯が音を立てて何かの通知音を知らせている。 ⋯⋯あんまりアキの携帯が鳴る事なんて無いのに。 興味本位でその画面を覗き込んでみた瞬間、見慣れた通話アプリの通知名に、またしても見慣れた名前が表示されてる事に気付く。 『吉村』 「っ、はぁ??」 何でアキと吉村が連絡取り合ってるワケ?! 怒りの感情のままにバッ!とアキの携帯を手に取れば、今では打ち慣れたロック画面の暗証番号を打ち込んで画面を解除してしまう。 ⋯⋯ってもまあ、あってもなくても変わらない位の簡単な番号なんだけど。 こういうことに関して本当に無頓着なんだもんな。 ⋯今だって俺がアキの携帯見てても何も疑問を持たないまま、俺の隣に戻ってきてるんだもん。 「ねえアキ、なんで吉村の連絡先なんて知ってるの?」 「⋯⋯別にそんなもん知らねえけど。」 「うそつき!だって、今吉村から連絡来てたもん!!」 ばっ!とアキに携帯画面を見せてみれば、じーっとその画面を見つめたあと、本当にその言葉通り不思議そうな表情で表示されているメッセージに目を通している。 「⋯何だこいつは」 「⋯⋯ほんとに知らないの?」 「だから知らねえって言ってんだろ。お前が入れたのか?」 「何で俺がわざわざアキの携帯にあいつの連絡先登録しなきゃいけないワケ?!」 思わずムキーッ!となって、アキの事を責めてしまう。「⋯⋯はぁ、」なんて、訳が分からないとアキの顔にははてなマークが浮かんでいて、静かに俺のことを見つめている。 でも、まあ⋯吉村のことに関しては確かにアキは何も知らなさそうだし、もちろん俺でも無い。 ⋯⋯だとしたら、後は⋯この簡単な暗証番号が原因⋯って事になるのかなぁ。 絶対に面倒くさいからって適当に設定して、それで直し方も分かんないしって感じ?? アキらしいっちゃそうなんだけど。 「あ〜⋯でも、最近携帯貸してくれ、って言われたから渡した記憶があるわ」 「絶対それじゃん。⋯⋯なんでそこで素直に貸しちゃうわけ?」 「なんか、携帯を部屋に忘れちゃったから〜とか、急いで調べなきゃいけねえ事があるから、とかそんな事を言ってた気がするけどな」 「そんなの嘘に決まってるでしょ、絶対に。それでまんまとアキの携帯ゲットして、勝手に連絡先も登録して⋯って、やる事全部やってんじゃん」 話を聞けば聞くほど不自然でしかないのに、アキはそれでも素直に渡しちゃったと。 ⋯⋯なんか、変に抜けてるとこがあるんだよなぁアキって。 ⋯と言うか、あんまり周りに興味が無さそうなアキの性格をうまく利用されてるというか。 ⋯⋯変にずる賢い奴。 「⋯もういいから、吉村の連絡先は俺が責任もって消しちゃうからね!!こんなのぜ〜ったいに許しません!」 「⋯何か必要な事とか聞きてえ事があるんじゃねえの?コイツにも。」 「これのどこが!大切な連絡に見えるわけ?!」 そんなワケがあるものか。ぱ〜っと手早い操作で開いた吉村とのトーク画面には、『今何してるの?』『元気?』『急に連絡しちゃって、ごめんね』『もう寝てる?』と、正味どーーーでもいい事ばっかが並んでる。それをアキに確認させるために見せてみれば、「⋯⋯へぇ。」と、その一言で終わってしまった。だから言ったじゃん。何も無いよ、って ⋯⋯あ〜!!ムカつくなあもう!! つい怒りで頭に血が上ってしまったのらしい。またしても俺の鼻からポタリ、と鼻血が復活してしまった。せっかく止まってたのに。 そしてそんな俺の鼻を慣れたようにサッ、と拭ってくれるアキの顔をぷんぷんと怒った顔で見つめたって、絶対迫力なんて無いのは分かってるけどね!吉村も鼻血も、ほんっっとにうざい!!

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