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新しい悩み事 6 終わり
よし!そうなれば吉村の連絡先をさっさと消してしまおう。
固い決意を決めて早々に画面の操作を始めようとしたその時、『やっと見てくれた!』と、嬉しそうなテンション感で送られてくる吉村からの返信。
俺が吉村とのトーク画面を開いた事で既読マークがついたことに目敏くも気付かれてしまったのらしい。
その事をきっかけに、また見境もなく始まる他愛のない連絡。
正直、何が目的かも全然分かんない。
「なにこいつ⋯めちゃくちゃ暇じゃん。」
「また何かきてんの?」
「⋯ご飯何食べたの?だって。」
「そんくらい教えてやったら?」
「ぜぇ〜〜〜ったいヤダ!!アキにとってはそんくらいでも、俺にとっては一大事なの!!」
もう良いだろう、と俺から携帯を取り戻そうとするアキの腕をバッ!と払い除けて、未だに止まらない吉村からの連絡を睨み付ける。
そうやってさぁ、吉村のこと甘やかすから調子に乗って勘違いするんでしょ!
アキに携帯を返した所でその問題が解決する訳がない。ぜーーったいに!!
だから、俺が何とかしないといけない。
『もう送ってくんな!!』
その一言だけ返してしまえばさっさと吉村の連絡先を消してしまおうと操作を始めたその瞬間、『夕だよね?』と、見透かされた様な返事が返ってきた事で俺の指先がピタリ、と止まってしまう。
一応アキのフリをして送ったつもりだったけど、なんでバレ⋯⋯⋯ま、まぁ別にバレたって問題ないもんね。
『ちょっと待ってね』
そして、脈絡の無い返事が返ってくる。
ちょっと待つ、って⋯何するつもりだ⋯?!実はアキじゃなくて俺が操作してる事をバレてしまった事、そしてこれは、アキの携帯。
何か変な事をされてしまったらどうしようも出来ない。謎に深まる緊張感に、ドキドキと俺の胸が高鳴り始める。
だけど、またすぐにポツンと送られてきた謎のURLらしき文字列。
っ、な、なにこれ⋯?!
こんな怪しいサイトを急に送られたって、俺が簡単に開く筈が⋯⋯
『最近アキから返って来たAVのさ、新作が出てんだよね。し・か・も コレは過去一アキにそっくりな作品なんですよねぇ〜!』
⋯⋯⋯、アキに⋯???⋯っじゃなく、て⋯⋯!
こんなのっ⋯!!
『ほら、凄くない?コレ 笑』
俺の好奇心を掻き立てる様に続け様に送られてきた例のパッケージ写真。
今回は学園モノなのらしく、俺達と似たようなブレザータイプの制服を来てるその人がでかでかとそこには映し出されていた。
⋯⋯めちゃくちゃアキじゃん。
そしてまんまと俺は釣られてしまった。
まだ他にも紹介したいものが有るから、とポンポン並べられていくAVのパッケージ画像。
そのどれもが魅力的で、俺にぶっ刺さりな作品ばっかだった。
アキ絡みのことになるとどうしても周りが見えなくなってしまう、俺の悪い癖。それがどんな形だってアキへの思いはブレないらしい。
最終的に俺個人の連絡先を教えて欲しい、と自然な流れで告げられた吉村の誘い掛けにも易々と乗っかってしまい、ぱぱっと操作をしてしまえば最後に『んじゃ、アキのとこから俺の連絡先は消してもらって。そしたら今のやり取りも全部消えるから』と、残される一言。
そうして俺と吉村の極秘のやり取りは完全にアキの携帯上から消えてしまった。
寧ろこの流れに持ってくのが狙いだったのでは?と少しだけ疑ってしまう位にはあまりにもスムーズに事が進んで、そして、あっという間に終わった。
っまあ、⋯仕方無い⋯っちゃ、仕方無いよね。
「⋯はい、これでもう綺麗さっぱり消えたから」
「なんかあったのか?」
「⋯へ?」
「消すだけにしてはヤケに長えなって思って」
アキって妙に勘が鋭いって言うか、俺がコソコソ何かしてる時に限ってこうやって聞いてくる。
⋯⋯まぁ、大体俺が何でも顔に出しちゃうからなんだけど。
⋯⋯変な顔してたかな、俺。
「大丈夫、何もないよ。もう二度と連絡してくるな!ってめちゃくちゃ悪口言ってやっただけ!」
「⋯なんだそれ」
⋯⋯何も疑われなかった。
っごめん。
俺が初めてアキについた、醜い形の嘘だった。
ほんとはダメだって分かってる。つい最近もAVの事でアキと揉めたのに、俺はほんっとに何にも学んでないみたい。
でも、どうしても気になるんだ。思春期男子の代表として、あのえっちな作品が。
やっぱり俺ってアキが絡むと、どうしようもなくなっちゃうみたい。
それからアキと2人でソファーの上でゆったりとなんでもない時を過ごす。アキがアプリゲーをする時は俺が寂しくならないようにくっついてて欲しい。そう伝えた日から律儀に俺の側に居てくれて、今日はゴロン、と俺の膝枕でゲームに夢中になっている。
そんなアキの姿をぼんやり見てると、アキの瞳がやがてトロン、と溶けていく事に気付いてしまった。
すっごい眠たいんだろうなぁ。眠たいけど、ゲームがやりたくて仕方ない、って感じで頑張って目を開けている。
だけど、すぐに閉じちゃう。
そして眠気と格闘する事数分、やがて意識がガクン、とした所で指先から力が抜けたその拍子にアキの顔面に携帯が落ちてしまう前に、キャッチしてあげる。
「⋯あき?そろそろ眠ろっか?」
「⋯⋯っあぁ、悪い。⋯⋯行こうか」
俺に起こされちゃった事で目を開けたアキの顔はまだトロン、としていて今すぐにでもまた眠ってしまいそうだった。
こういう時のアキの雰囲気、好きなんだよなぁ。なんか赤ちゃんみたいだもん。
アキの手を取って寝室まで連れて行ってあげると、先に俺がベッドに上がってごろんと横になってアキを俺の上に呼ぶ。
そうすると素直に俺のとこまで来て、ぴたって俺の胸にくっ付いてそしてすぐに寝ちゃうんだよ。
⋯⋯ほんっとうに可愛い!!
アキが寝る時はいっつも一瞬。すぐパタッ!て寝ちゃうんだよなぁ。こういう時のアキとも、いつか⋯⋯ヤってみたいなぁ。なんて
──ピコン、
聞き慣れた通知音が俺の携帯から鳴っている。
俺の部屋着のポケットから携帯を取り出して何かと確認してみると、吉村からの連絡だった。
こいつタイミング良すぎない?⋯監視カメラか何か設置した?俺達の部屋に。
そして、俺の既読を確認するや否や、追加されてくAVの数々。『アキが寝た後のお楽しみにでも、どうぞ!』だって。
ちゃんと分かってんだよなぁ。
─少しだけ、なら⋯⋯
念の為に携帯の音を全部消して、アキが眠ってる事もしっかり確認して、1つ目のURLを開いてみる。
⋯⋯⋯っ、あぁ〜⋯ヤバい、なぁ。
最高、すぎる。
俺の中で、新しい扉がガチャリと開いちゃった音がした。
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性欲過敏なお年頃。終わり。
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