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※ 転校生 7

互いに無言のまま、それでも無意識の内に進む先は夕の部屋のある階まで。あくまでも学校の敷地内、数分程度で部屋の前に着けば夕が鍵を開けてくれるのを待つ。 が、一向にその気配が無い。今更何だと背後に佇む夕に視線を向けて。 「⋯⋯まだ隠してるもんでもあるって言いたいのか?」 「違うよ。⋯⋯今度はそれと逆。もう隠してるものは、本当に無いからね」 「良いからさっさと開けろ」 「⋯⋯分かったよ」 念を押す様に告げられても、今はもうどうでも良い。ガチャリ、と無機質な音を立てて開けられるドアを潜って先に部屋に上がれば、一直線にリビングへと。たった数日、それでもどことなく懐かしさを覚えてしまえば辿り着いた先のソファーの上にドサッ、と横になって両腕は頭の下で組む様に固定し、そのまま瞳を閉じて。 「⋯アキ、眠るの?ご飯とか、お風呂は?今寝たら遅くなっちゃうよ」 「いい、飯は要らねえし風呂も明日で良い」 「⋯⋯ねえ、ちゃんとご飯食べてた?⋯痩せてるよ、アキ。目の下にも隈が出来てるし⋯」 「⋯⋯さあな、どうでも良いだろそんな事」 ここ数日の事を思い返せば、確かにゲームが理由だとしても1人だと空腹を感じる事が少なく、そもそも睡眠に関しては削ってなんぼだと対して気にも留めてなかった。 そりゃ、確かに疲労を感じやすくもなるわ。 改めて自分の生活を思い返す事で理由が明確なものとなるが、そもそもそんな事を今更指摘されたくはない。 不意に俺の元へと伸ばされていたのらしい腕が軽く腹部に触れる感触に気付く。「触るな」とその腕を振り払えば改めて俺の事を覗き込む様に床の上に座っている夕に視線を向けて 「⋯⋯そもそもお前があんな事してなけりゃ2人でちゃんと飯食ってただろうな。」 「⋯それは、そう⋯だね。俺も一人でご飯食べるのは⋯寂しかったし」 「お前は動画見ながらでも食えんだろ。画面の中に相手してくれる奴が居るからな」 「っ⋯そんなんじゃ!!⋯そう言うのでは、無いよ。確かにアキに似てる、人、だけど、その人はアキじゃない⋯から」 「でも俺に似てりゃそれで満足なんだろ?良かったな、随分楽しんだようで」 夕の口がぎゅっと固く結ばれる。普段ならああだのこうだの減らず口が止まらない癖に⋯⋯ちゃんと最後まで否定しろよ 俺じゃなくてもいい、どうしてもそう捉えてしまうのは仕方の無い事で。結局の所、俺が相手じゃなくても数日の間夕は満足気に過ごしていた。 「そう言えば、⋯⋯吉村が他になんて言ってたか教えてやろうか?お前があの動画ばっか欲しがるからロスなんじゃねえか、って聞いてきたんだよ。それなら俺が相手してやるから、って」 「⋯⋯っは?!そんなわけ⋯!!」 「アイツと俺が2人っきりになって何も無い訳がねえだろ?お前さ、頭浮かれすぎてそんな事も考えられなくなったのかよ」 俺と吉村が2人っきり、今まではそんな状況を完全に避けていた筈の夕が一瞬だけ見せた隙を見逃される訳が無い。一人でもある程度の対処は出来るが、毎回同じ様な方法が通用するとも限らない。 俺の言葉を聞いた瞬間、夕の表情が固まる。何かを思い出すかの様に視線を彷徨わせていたかと思えば、咄嗟に立ち上がり頭の下で組んでいた両腕を取られ、そのまま背後のソファーに縫い付けられる様に力強く掴まれる。「なにされたの?」と静かに問い掛けられる言葉に対して、「⋯⋯どうだろうな?」と歪な笑みを口許に浮かべながら口を開く。 「俺が何かされてたらどうすんの?俺の事無理やりヤんの?それとも、吉村の事殴りに行く事が先か?⋯考えてみろよ。⋯こうなったのは、全部、俺から目を離してたお前の責任だろ」 「⋯⋯そ、んな⋯⋯。⋯おれ⋯が悪い⋯?」 「ああ。だから俺が何をされてようが、逆に俺が何をしてようが、本当の事をお前には何も分からないんだろうな。」 今回の件に関しては、正直ノーカンだ。逆に俺がアイツに手を出した、と表現した方が正しいのだが、それでも今は都合の良い出来事でしか無い。全部夕の責任だと責め立てる様に、ゆっくりと語り掛ける。 コイツにはただモノを言うだけでは伝わらない。 自分で考えて、思い出して、記憶に刷り込ませないと覚えてはくれないだろう。 俺の言葉に対して様々な感情が入り乱れているのだろうか、視線の合わない夕の瞳をしっかりと見つめながら、その思考の合間に力の緩んだ夕の手元から押さえ付けられていた両腕を強引に引き抜けば、逆に俺から夕に、腕を伸ばす。 そしてそのまま制服の胸元を掴めば、俺の方へと引き寄せて。 「吉村に俺が直接言ってやろうか?お前が動画ばっか見てて寂しいから、相手してくれって」 分かりやすい挑発を。口許には笑みを浮かべながら伝えてみれば、案の定、慌てた表情で胸元を掴んでいる俺の腕を力強く握り締めながら必死に首を振る夕に対し、理解が出来ないとばかりに緩く首を傾げてみせる。 「⋯⋯!!何で、っ⋯!?嫌だ⋯!!だっ、てアキは俺のだし、吉村の相手なんかするんだったら俺が、寂しくさせないように頑張る、から!!」 「⋯⋯だからさ、何回も、言ってんだろ⋯お前のもんなら誰にも触られない様にちゃんと見てろよって⋯このっ⋯⋯クソが!!そんな簡単な事も出来ない奴が何を頑張るって言ってんだ??俺にバレない様に他人がヤってる動画を見て楽しんでるような奴の事が、信用出来るとでも思ってんのか?」 「⋯⋯⋯っ⋯それ、は⋯⋯」 今まで理性で抑えていた糸がブチン、と切れる様な音がした。感情のままに止まらぬ言葉を次から次へと吐き出せば、夕の胸元を掴んでいた手を突き放す様に離し、横たえていた身体を起こして。 そしてそのまま、言葉に詰まり下を向いてしまった夕の姿を確認しては、首元を力強く掴んで今まで俺が座っていたソファーへと力任せに押し倒す。下手に抵抗されない様に馬乗りで胸元に乗ってしまえば、両手で夕の首を掴みその手に重心を掛けて力強く締め付けながら、おさまらない怒りを一気にぶつけて。 「なあ、夕?お前は本当に何にも学ばねえよなぁ。俺から言われた事も全部都合良く忘れて、バレなきゃ良いとでも思ってたのか?⋯⋯んで、見つかったら馬鹿みてえに適当な言葉並べて俺に言い訳でもしてりゃ許してもらえるとでも思ってたんだろうな」 「ぐっ⋯が、ぁっ⋯!?は⋯っ!あ゛、きっ⋯!!ぐ、る゛じぃ、っ゛⋯⋯!!」 「⋯⋯⋯そう簡単に許されると思うなよ」 夕の手が俺の腕を外そうともがく様子を視界の端で捉えれば「触ったら殺す」と、苦しくても絶対に抵抗はさせない脅しの言葉を伝えて。俺の言葉に瞳を見開き驚いた表情を浮かべながらも、この場面で抵抗してしまえば色々と後が無い事を悟ったのか、素直に力の抜けた夕の手を確認する。 段々と苦しさから赤く染っていく夕の顔を静かに眺めながら、ふと前にテレビ画面で流されたAVの内容を思い出す。テレビの向こうの相手もこうやって首締められて苦しんでたっけか。 「お前、こう言うのが好きなんだろ?このまま何秒意識保ってられるか数えてやろうか?」 「⋯!!好きじゃ、な゛っ⋯」 「へえ⋯じゃあ何。俺よりも画面の向こうの奴とセックスでもしたくて見てんのか?」 「ちが⋯う゛っ゛!!」 「その割には楽しそうに見てたけどな。あの時のお前は」 「⋯⋯⋯も゛っ⋯ほんと、に゛⋯俺、が⋯わる⋯⋯ごめ⋯⋯⋯な、さ⋯⋯い゛⋯!!」 全てを否定されたとしても、それでもムシャクシャとした感情はまだ胸の中に抱えたまま、晴れる事無く存在し続けている。 夕が反省の色を見せたとしても、それだけではまだ足りない。前回もそれなりに強引な方法で学ばせた筈だが、それでもまだ足りないのなら俺の気が済むまで付き合って貰う事にする。手加減は一切してやらない。 どの位時が経ったのだろうか、苦しむ夕を弄ぶ様に手に力を緩めたり、また力強く締めてみたり。その度に必死で酸素を求めて口をパクパクとさせる夕に「苦しいか?」なんて分かりきった事を問い掛けてみる。その度に謝罪の言葉が繰り返されるが、まだ聞き入れる気は一切ない。 やがて限度が近付いてきたのか、夕の視線が俺からゆったりと外れ酸素を求めて動いていた喉の動きも緩やかになっている。 ⋯⋯⋯一旦、な。 喉に触れていた指先の力を抜き、完全に呼吸を解放してやる。 途端に激しく咳き込みながら嗚咽を漏らし、必死に呼吸を繰り返す姿を暫く見つめていたが、喉に触れたままの指先にもう一度力を込める素振りを見せてみれば慌てて俺の手を掴まれる。生理的な涙を頬に伝わせながら必死に訴える夕の言葉に鋭い視線を向けて。 「⋯⋯っ!?ま、っ⋯⋯アキ⋯、!!も、ほんと⋯⋯コレ、苦し⋯!!」 「触ったら殺すって言った筈だが?」 「⋯⋯も、1回⋯は⋯できな⋯⋯⋯。俺、⋯⋯ちゃんと反省⋯⋯してる、から⋯」 「⋯⋯⋯⋯じゃあ、さっきより長く我慢出来たら勝手に触った事に関しては許してやるよ」 「分かったな?」と緩く首を傾げればまだ余韻が抜け切らないのか、胸を何度も上下させて整わない呼吸を必死に吸い込みながら恐怖で引き攣る夕の顔を見下ろし、再び指先にゆっくりと力を込めていく。 今回も俺の言い付け通りに抵抗はせず、ただ俺から与えられる仕打ちに顔をぐちゃぐちゃにさせながら堪える姿を見ていれば、奥深くの別の感情がどくり、と沸き上がる感覚を覚える。⋯⋯⋯俺の頭もイカれちまったか。 夕の口端からたらり、と伝い落ちる涎に気付けば、それを軽く指先で拭ってやる。 焦点の合わない瞳や、時々力無く漏らされる掠れた呻き声。先程から声を掛けても反応が鈍く、朦朧とした意識から限度が近い事を確認して漸く指先から力を抜いて解放する。その瞬間酸素を求めて夕の口が大きく開き、再び呼吸を求めて咳き込む姿を眺めながら、その顎を掴んで俺と視線を合わせる。 「⋯⋯おい。ちゃんと目開けて俺の顔を見ながら謝れ」 「っ⋯は゛ぁ⋯!!⋯⋯ご、ごめ⋯⋯ん⋯⋯な、さ⋯」 「⋯⋯あ〜でも、まだやってない事があったよな。」 夕からの謝罪に対して返事を告げる前に、ふと思い出した様に緩く首を傾げる。次はなんだとばかりに呼吸もままならない余裕の無い表情を向ける夕に気付けば、「じっとしてろ」と一声掛けてから、掴んでいた夕の顔を離してゆっくりと腰を上げ腰元まで下がっていく。 両足を割開く様にその位置で身体を固定させては、膝立ちになってその片方を夕の下腹部にそっと乗せる。不安気に揺れる瞳を見つめながら徐々に、少しずつ足に力を込めていくと今から何をされるのか大体予想が出来たのか、夕の表情が歪んでいく。 下腹部を押し潰す様に前屈みで体重を掛けてしまえば、ゴリゴリ、と左右に膝を揺らす事で刺激を与えて。 「い゛い゛っ!!!あ⋯が、⋯っ!!!ま゛!っ゛!!うごかな、い゛っ⋯!!!」 「お前確か1回か2回自分でシコッたって言ってたけど、⋯⋯他の奴見て勃たせてたらお前のココ、噛み切るって約束だったよな。⋯⋯そのまま使いもんにならない様に潰すか、俺が噛み切ってやるか。切り落としても良いけど、どうすんの?⋯⋯⋯自分で選べ」

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