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転校生 4
「⋯⋯で、そこの橋渡った所にバーガー屋があんだろ?あれがくっそ美味いんだよ」
「へぇ〜!そこにはまだ行った事が無かったから分かんなかったなぁ。それでそれで?何がオススメなの?」
「やっぱ定番メニューのテリヤキじゃね??あのタレが美味いんだよな」
「何それぇ⋯美味しそ〜!!俺も今度行ってみよっかな。⋯あっ!なんなら嵐が連れてってくれない??」
「おぉ〜!全然良いけどな。マジで食わせてやりたいわ、ガチでうめえから」
また飯の話してんのか、こいつは。
ニコニコと吉村に向けてオススメの店舗紹介でもしてんのだろうか。それを聞いてる吉村も人の良さそうな笑顔が絶えず、飯の約束までちゃっかり取り付けている。
そして、俺の事に気付いた吉村に腕を取られて嵐と吉村の間に身体を引き寄せられてしまった。
⋯っどいつもこいつも、俺の事オモチャだとでも思ってんのか?
「ねえ、あーきっ。もちろん、一緒行くよね〜?」
「⋯そのバーガー屋にってか?」
「色んな種類のバーガーがあるんだって!夕みたいにさぁ、野菜が苦手な子でもカスタマイズ出来るし、バーガー以外にもポテトとか、サイドメニューも美味しいんだよね!」
⋯⋯んで、ヤケに詳しいなコイツは。絶対知ってる奴の反応なんだよなそれは。
「そうそう、逆に中身を増やしてガッツリバーガーだって作れんだよ。⋯⋯この街の事色々知りたくてさ。他にもどんなとこがあるのか、明樹達のオススメも知りてえし。⋯⋯ダメか?」
さっきまで楽しそうに語ってたヤツが、しゅん、と寂しそうな表情で俺の顔色を伺うように少し身をかがめて顔を覗き込まれてしまえば、「分かった。」と、認めざるを得なかった。
⋯⋯こう言う顔に弱いんだろうな、俺は。
自覚したくも無かったが。
「でさぁ、⋯⋯あっ!夕〜!⋯あららら、どうしたのぉ〜!そんな捨てられた子犬みたいな顔しちゃって!」
吉村が夕の名を呼ぶ声で、チラリと背後を振り返ってその様子を確認してみる。⋯まさに、吉村の言葉通りの顔をした夕がとぼとぼと歩いていて、吉村のスキンシップを明らかに迷惑そうに避けてる姿がそこにはあった。
⋯コイツも似た様な顔しやがって。
「朝は結構元気そうにしてたんだけどなあ。腹でも空いてんのか?」
「⋯まあ、多少はそういうのもあるんじゃねえの」
「⋯待って、めっちゃ良い匂いしてきたわ」
空腹だとか眠気だとか、そう言う感情に弱い夕の事を思い返せばそれもそうだと頷く。⋯まあ、今回の件に関してはそれだけじゃねえんだけど。
嵐の言葉で改めて周りを見渡してみれば、既に食堂が目の前に見える事に気付く。
分かりやすく落ち着かない様子の嵐を引き連れて食券機まで案内してやれば、色んなメニューが並んでるその種類に感動の声を漏らしながら、どれにしようかと真剣に悩み始めている。
その姿を横目に予め決めておいた焼き魚定食をさっさと選んでしまえば、そのボタンを押して食券を手に取る。
「うわ〜、それも美味そうだよな。っ、悩む〜!!」
「魚も食いてえなら、俺の分けてやるけど。」
「⋯⋯良いのか?⋯っやっぱ明樹と友達になれて良かったわ、俺。」
「安い関係だな。⋯先に座れそうなとこ探してくるから、選んだら来いよ」
がっ、と肩を組まれて感謝されても、正直嬉しくは無いな。
未だに食券メニューと睨み合っている嵐に一声かけて、先に食券を受け取り口に預けてしまえば席の確保に向かう。
その際にちらりと夕の様子を確認してみれば、珍しく吉村と2人で話し込んでいる姿が視界に映る。
珍しい事もあるもんだな。
何かと騒がしい2人が大人しくしてくれりゃそれで良い。
確保した4人掛けのテーブルに腰を下ろし、手持ち無沙汰に携帯に触れていればやがて先にメニューを選び終えた嵐がホクホクとした顔で戻って来た事に気付き、顔を上げる。
「何にするか決まったのか?」
「すんごい悩んだんだけど、今日は唐揚げ丼にしたわ。結構量があって美味いって夕が教えてくれたんだよな」
「確かにな。アイツもよく食ってるイメージがあるわ。」
そういや⋯夕も量を食える奴だっけか。飯の好みが偏ってるだけで、普段から毎食しっかりと食ってる姿を思い出す。
「⋯⋯あ、それ明樹もやってんだ。どれどれ〜、おっ!良いとこまで進んでんじゃないの」
俺の隣に腰を下ろした嵐が、少しだけ椅子を俺の近くまで寄せて手元を覗き込んでくる。
見慣れたゲーム画面だったのか、慣れた手付きで俺の代わりに操作を進めていくその指先の動きを確認していれば、なるほどな、と感心してしまう位には手馴れた様子だった。
「⋯お前は本当に何でも知ってんだな。⋯⋯この編成がどうしても上手くいかねえんだよな。」
「なるほど〜?⋯え〜っと⋯そっちは属性タイプが相性悪いヤツら同士だから、⋯ここを⋯こうしたら」
ブツブツと互いに会話を交わしながらゲーム画面に夢中になって居れば、漸くやって来た吉村が俺達と向かい合う様に座る中、せっせと俺の隣まで椅子を移動して座り直す夕の姿が視界に映る。
「⋯ん?ちょっと、⋯夕?おかしくない?夕もそっちに行っちゃったら俺一人になっちゃうんだけど」
「別に何も⋯おかしくは無いと思うけど」
「えぇ〜?!さっきまで俺と2人で仲良くお話してたじゃん!戻って来なよって」
「無理。さっきはさっき、今は今。」
結局そんな感じなのか。
珍しい光景もあるもんだと自由にさせてはいたが、夕の気まぐれだったのか、何なのか。
結局その意図はよく分かんねえが、丁度呼び出し音が俺の手元で鳴り響き、飯を受け取りに席を立つ。
そして戻って来た頃には嵐が吉村の隣に座り直してる光景がそこにはあった。真相は分からねえが、多分気を利かせてやったんだろうな。
受け取った飯をテーブルの上に置いて椅子に座り、先に手を合わせて軽く挨拶を済ませた後に湯気の立っている味噌汁を冷ましながらゆっくりと飲んで居れば、ヤケに突き刺さるような視線が送られてくる事に気付く。
「⋯⋯食うか?」
「⋯イヤ!流石に明樹が先に食ってからで良いから」
「別にんなの気にしねえけど。」
「⋯⋯いいのか?じゃあ、少しだけ「俺も食べたい!!」
相変わらず食い意地のすげえ奴。
嵐に向けて俺のトレイを寄せたその時、嵐の言葉に被せるようにして夕が身を乗り出し、多少強引な形で「いい?!」と、嵐に許可を得ている。
⋯そこは俺に聞く場面じゃねえのか。
「あっ、じゃあ俺も味見しちゃおっかなぁ〜」
「⋯⋯はい!嵐、こんくらいで良い?」
「あぁ、丁度良いサイズだな。⋯⋯っと、吉村にも⋯」
「だ〜!!嵐!いいからさっさと食べる!!」
「っうお⋯わ、かったけど。」
相変わらず吉村には手厳しい様で、嵐の気遣いも全部跳ね除けて箸で切り分けた魚を嵐の口に無理矢理突っ込む夕の姿と、「ざんねん」と澄まし顔でその光景を見送っている吉村の姿。
⋯⋯本当に何なんだろうな、コイツ等は。
「⋯でもさぁ、明樹?皆にご飯分けちゃったりなんかしたらまた痩せ」──ゴンッ!!
吉村の口からその言葉が出る前に、テーブルの下でその椅子を蹴り上げる。
余計な事は言うんじゃねえぞ、と睨み付けてやればしれっと俺から視線を外して「まだかなぁ〜」なんて、受け取り口の方を白々しく確認している。
その隣では未だに俺の飯に夢中な2人が居て、何も気付いてねえのらしい。⋯ったく、余計な事を。
「ここのね、ポテトサラダが美味しいんだよ。定食メニューには必ずついてくるんだけど⋯嵐は唐揚げ丼だっけ?」
「うわ〜、マジかよ!じゃあ次は定食メニューで決まりだな」
「⋯それも全部持ってけよ。2人で食って良いから。」
魚の次はサイドメニューのポテサラに2人揃ってじーっと熱い視線を向けながら、会話を弾ませている。腹が空きすぎて我慢出来ねえんだろうな。
ポテサラの皿を2人の前に置いてやれば、今更遠慮なんて無いのか俺の言葉を待ってました!!とばかりに2人で分け合いながら食ってる姿を横目で確認しつつ、何か言いたげに俺の事を見ている吉村にはもう一度、視線で制しておく。
⋯逆に助かってんだから、コッチは。
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