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転校生 7
「⋯お前が居たら何も身にならねえわ。もう起きっから、さっさと離れろ」
「もうちょっとだけ。こんな機会めったに無いんだからさ、堪能させてよ」
「それがもう十分だろって言ってんだけどな」
だいぶ良い時間相手をしてやってる筈だが、それでも執拗に接触を図ろうとする吉村の行動に対して抑えきれない溜息を漏らす。
折角のサボりもこうなってしまっては意味が無い。
何をどう満足したらコイツは離れてくれるのか、一旦自由を与えて好きにさせてしまっていたその隙が吉村のスイッチを入れてしまった様で、やがて俺の身体に回されていただけの腕が不穏な目的を持って、モゾモゾと動きを始めた事に気付く。
「⋯⋯おい。」
「ん?なになに、どうした?」
「どうしたもこうしたもねえだろ。触んなって言ってんだけど」
「あれ〜?そんな事言われた覚え無いけどなぁ」
俺の言葉を適当にはぐらかしながら、吉村の手は俺の身体を制服の上からなぞるように、そのまま何の前触れも無くガシッ!と無防備な下半身が鷲掴みにされた感覚に気付く。
「な、にしてんだよ」
「⋯わぁ!やっぱ夕の言う通り、明樹のココってビッグなんだ。⋯⋯顔に合わないってそういう事か」
フムフム、と俺の下半身の形を確かめる様にモゾモゾと動く吉村の指先と、場に合わない真剣な眼差し。それだけでも不愉快だが、⋯⋯アイツ。余計な事ばっか漏らしやがって。
「と言うことは〜、⋯もしかして夕がネコ側って事?こんな立派なものが有るのに、使わなきゃ勿体無いもんねぇ」
「⋯⋯離れろ、って」
「でも〜⋯夕が明樹の事を目の前にして、大人しく出来る⋯訳が無いんだよね。見るからに欲情を抑えられないワンコって感じがしない?絶対そういう場になったら入れたいって騒ぐハズなんだけど⋯」
「⋯っ勝手な事ばっか言ってねえで止めろって言ってんだろ⋯!」
なん⋯なんだコイツは。
人のチンコを触りながら顎に手を当てて俺と夕の事情について語り始めている。
その様子から別に俺に対しての言葉では無く、あくまでも状況整理として考えてるだけ、なのらしいが。
そんなコイツの状況に対してただただ不可解な出来事として様子を見ていたのが、やがて考える事を止めたのらしい吉村の手が動き出し、流れる様にガチャガチャと俺のベルトを外す音が聞こえてくる。
「⋯っ、!?お前!!」
「ねえ、明樹。1回だけ、俺とヤってみない?考えてみたんだけど、もし夕がネコの立場だとして、明樹のお尻が未開発なのは勿体無さすぎるんだよね。俺が後ろでのイき方とか色々教えてあげるからさ、それを夕にも伝えてあげてよ。」
普段とは異なる真剣な表情に合わせて謎の力説も加えながら、マシンガントークの様に止まらないその言葉の数が吉村の決意を表してるかの様だった。
⋯⋯だが、確かに今のコイツには普段の下心なんて隠されて無い⋯⋯訳あるか。場面を考えろ。
真面目な話だからと押し通してしまえば俺が折れてくれるとでも思ってんのか、⋯⋯それともそれが本気なのか。
その辺の事に関しては定かでは無いが、そうだとはしてもこの状況を安易に許してやる程俺も馬鹿では無い。コイツに関しては、尚更。
「っ、んなのどうでも良いから、いい加減にしろよ」
「大丈夫。夕より俺の方が初めての相手をしてあげんのは上手いと思うよ。まずは俺で慣れてみてさ、次は明樹が夕に教えてあげながら、気持ち良くして貰えば良いだけの事だから。ね?大丈夫大丈夫。」
何が大丈夫だ馬鹿が。
まるで話の通じないコイツの相手をすんのはどうにもなんねえ事だと薄々気付いてしまっているからこそ、早めに決着を付けてしまいたい所ではあった。
やがて金具が外されたベルトが自由の引き金となってしまい、ファスナーが開いていく音が俺の耳にも届けば思わず漏れた舌打ちと共に拳を握り締め、コイツの顔面に目掛けてグーパンを仕掛ける。
つもりだったが、どうやら俺の舌打ちがその合図になってしまっていたのらしく、瞬時に身構えていた吉村にその腕を取られて力強く引かれるがままに身体ごとひっくり返されてしまう。
「⋯っと、危ないなぁ。明樹、お願いだから大人しくしてて。」
「⋯っ、ん、でだよ⋯⋯!!」
うつ伏せの状態で抵抗を押さえ付けられてしまえば、吉村の重みが背中越しに俺の身体に伝わってくる。
流石にその重力からどうにも逃げ出す事も出来ないまま、押し潰される感覚に対してギリッと奥歯を噛み締める事でふつふつと湧き上がる苛立ちを押え付ける。
その間にも吉村の手は手際良くシャツのボタンに手を掛けて、ボタンを外す事に専念している事に気付いてしまった。
⋯っとに、コイツは⋯!!
⋯こういう時こそ、一旦冷静⋯に。考えろ、俺。
「⋯⋯、⋯じゃない。」
「⋯ん?何?どうした?」
「⋯初めて、とかじゃ⋯ねえって言ってんだよ」
「⋯⋯⋯ということは、つまり⋯?」
「ごちゃごちゃうるせえ。」
俺の言葉に対して吉村の気が緩んだ瞬間を、見逃さなかった。
俺の言葉を聞き取る為に背後から近付く吉村の顔の位置を横目で確認した後、今度は静かに勢いをつけて、ゴンッ!!っと派手な音を立てながらぶつかり合う俺の後頭部と、吉村の顔面。
「ッ、゛ッ〜〜───⋯!!!!!」
俺の反撃に身構えて無かった吉村の身体はその痛覚を抑える事に必死で、不意に俺の上から痛みに悶えながらゴロン、と転がり落ちたそのタイミングを見計らい、吉村の身体を押し退けながらさっさとベッドから抜け出してしまう。
石頭で良かったわ。
顔面を抑えながら悶える吉村の姿をベッド脇から静かに見下ろしてみる。
芋虫みてえにゴロゴロと転がりながら、どうやら打ち所が悪かったのか中々顔を上げる事も出来ないその姿に対して、何だか無性に腹が立ってくる。
大人しくしてりゃ好き勝手にしやがって。
その腹いせに吉村の腹部に向けてトドメを刺すように思いっきり蹴りを入れてしまえば、再び苦痛の声を上げている吉村の姿に背を向けて、保健室を後にする。
⋯⋯つもりだったが、勢い良くガラガラッ!!と目の前のドアが開かれ、その隙間から慌てた様に駆け込んで来る見知ったその姿に足が止まってしまう。
「⋯⋯何してんの」
「っ、アキ!!!!は、っ⋯無事、だった⋯⋯の?!」
「は?」
「携帯っ⋯!!なんか、っ急に吉村から着信⋯が来て、それでなんだ、⋯って思って出てみたら、アキと話してる聞こえてくる、からっ⋯!!」
携帯を強く握り締めながら息を乱し、見るからに急いで来ました、と言わんばかりの夕の顔には不安と安堵と、様々な表情が入り混じった色が浮かんでいて、俺の事をじっ、と見ている。
その際に告げられた夕の言葉に対して、ぼんやりと思考を巡らせてみる。
⋯⋯よく分かんねえが、⋯思い当たる節なら一つあるか。
多分、コイツとのやり取りを見せてやると吉村がメッセージ画面を開いたあの場面で、何らかのタイミングで通話ボタンが押されてしまっていたのか、それに気付かず事が色々と進んでしまったと。
が、そんな事はどうでも良い。
俺の事を見ているその視線から顔を逸らし、「退け」と一言、静かに伝える。
「⋯⋯っ、あき⋯?⋯な、どうしたの⋯?」
「退け、って言ってんだろ。聞こえねえのか?」
「⋯っ、な、んで⋯⋯?」
俺の態度に違和感を覚えたのか、今度は不安気な表情を浮かべながら問われる言葉。
⋯⋯どうしたもこうしたもねえだろうが。元はと言えば、お前が原因でこうなってんだから。
コイツの顔を見てると吉村の言葉を思い出してしまう。
ここ数日、毎日予定があると慌てて帰ってたあの日々がくだらねえAV鑑賞の為だとか何とか。
俺の心の奥底で抑えていた筈の何かが、グッ、と込み上げてくるような、そんな感覚に気付いてしまう前にさっさと此処を出てしまいたい。
「あきっ⋯⋯!」
徐に俺に向けて伸ばされる夕の腕。
その腕をバッ!と払い除け、力強く握り締めた拳を振り上げて吉村の時と同様に加減も無く夕の顔面を殴ってしまえば、その身体を目の前から押し退けて保健室から出ると最後にバンッ!!と派手な音を立ててドアを閉めてしまう。
どいつもこいつも、ほんっとうにくだらねえな。
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