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朝食と赤い糸

春の暖かな日差しと鳥の囀りを感じながら重い瞼をそっと上げる。 上半身を起こしてベッドでグッと伸びをする。 春の日差しは心地よくてどうしても眠くなる。伸びとともに大きな欠伸をしてからポーッとした頭で布団をベランダに干して、窓を開けて、着替えている間に部屋の空気を入れ替える。 制服は嫌いだ。堅苦しいし気が重くなる。始業式か…めんどくせーなと思いながら部屋を出て一階に降りる。 リビングに向かう前に洗面所へ行って、顔を洗って髪を梳いた。 顔を洗ったのにまだ眠くて、大きな欠伸をしながらリビングに入って、椅子に座った。 温かい味噌汁と、目玉焼き、それにベーコン、レタスの入った朝食がすでに用意されていた。 「おはよ」 ポツリと独り言のように言うと、母さんはニコッと微笑んだ。 「おはよう尊」 俺は父さんも母さんも好きじゃない。小さかった俺を挟んで毎日激しい言い合いをした。 間に挟まれているのも怖かったけど、2人が離婚をするのも怖かった。 本当は、『2人とも仲良くして』『離婚なんて嫌』って言いたかったけれど、その頃は怯えていたし、言う勇気がなかった。 どっちについて行くの?とも聞かれず、俺は母さんに腕を引かれて家を出た。 毎日料理を作ってくれて、必要なものは買ってくれるからそこは感謝してる。でも、昔のことをまだ引きずっているからか、好きになれない。 椅子に座って、いただきますと言って食べ始める。 母さんとは必要最低限しか話さないし、俺も性格は良くないから周りに友達もいない。1人は寂しくない。慣れた。きっとそれも思い込みで、実際は寂しいんだろうけれど、よく分からない。色々考えるたびに頭の中がぐちゃぐちゃになって、しんどくなる。 今もそんなことを考えてると知らずに、微笑みながら俺を見つめている。 見るな、気持ち悪い。ムカつくんだよ。そんな言葉を味噌汁と一緒に飲み込んだ。 「今日から2年生ね。今年こそお友達できそう?」 うるせーな。そもそもこんなことになったのは、人生めちゃくちゃになったのは母さんのせいだ。全て母さんのせいとは言わない。俺だって諦めて努力してねーし。そんな風に思いながら何も言わずにギロリと睨みつける。 朝からイライラしながら朝食を食べているといつのまにか全て平らげていた。 「ごちそうさま」 手を合わせて、食器を流し台に持っていこうとしたとき、視界に赤いものが映った。 赤?ま、まさかな。と思いながらも確認すると、小指には蝶々結びされた赤い糸があった。 「…は?」 これ、起きた時からあったか?あったならなんで気づかなかった?考え込みすぎた?…どっちにしても最悪だ。 食器を流し台に置いてから赤い糸を引っ張ってみた。びよーんと伸びて、千切れる様子がない。 「う、嘘だろ…?」 恋人なんていらない。絶対にいらない。 「はぁーっ…最悪だ…」 ズルズルとしゃがみ込んで頭を抱えた。

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