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第9話

 あれから何度、夏が来ただろう。  あの日、意識を失ったまま目が覚めたら朝になっていて、風邪でも引いたのかと思うくらいに体が重だるかった。  携帯が鳴っていたのを思い出して、手に取ると大学の友人達からの着信が数件と、そして津島からの着信があった。  時間を見ると俺の部屋を出ていったくらいの時間の着信だった。もしかしたら前言撤回する為に掛けてきたんじゃないかと淡い期待をしながらその番号に掛け直した。  電話に出たのは津島本人ではなかった。  声だけでも酷く憔悴しているのが分かるくらい落ち込んだ声で対応したのは津島の母親だった。  津島の母親は涙声で、昨夜津島がこの世を去ったことを告げた。  俺は直ぐにそれを信じられなかった。だって津島が息を引き取った時間、俺は津島と一緒にいたんだから。

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