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第3話 いちゃいちゃ、したくなっちゃって(3)★
「あーっ、お前な!?」
犬塚は「待って、待って」と言うように手を振ってくる。
彼らしいといえばらしいが、せっかくのムードが台無しだ。この状況、どうしてくれようか。
「……やっぱ駄目だ。待てねェ」
少しだけ我慢してみたが、十秒程度しかもたなかった。焦れた不破は、半ば強引に犬塚の腕を引き寄せた。
「先ぱ……っ」
噛みつくように唇を重ねる。驚いた犬塚は反射的に身を引こうとするものの、すぐに観念したのか大人しくされるがままになった。
ならばこちらも遠慮はしない。何度か角度を変えて、啄むようなキスを繰り返す。
「ん、むっ……」
固く閉ざされていた唇が柔らかくなっていくのを感じ、不破はこじ開けるようにして舌を差し入れる。一瞬、びくりと体を震わせた犬塚だったが、嫌がる素振りはない。
それを確認しつつ口腔をまさぐれば、甘いキャンディの味が舌先に伝わってきた。やたらと甘い――犬塚の唾液と混ざり合って、いっそう甘さが増しているような気がした。
「あっま……レモン味?」
「は、はちみつレモン、です」
「そりゃ、ちょっと甘すぎんな」
いつの間にやら犬塚の方も積極的になっていて、口内でキャンディを移し合いながらキスを堪能する。言葉どおりの甘ったるさに、全身が火照っていくようだった。
「犬塚、随分と積極的じゃん――美味しい?」
「……っ、ん」
「ったく、ガキのくせにエロい顔しやがって」
犬塚はすっかり蕩けた表情になっていた。
ウブながらも、一度スイッチが入ると貪欲になるタイプなのかもしれない。もっと欲しいと言わんばかりに舌を伸ばされ、不破も夢中になって貪り続けた。
しかし、恋人らしい時間もそう長くは続かない。
昼休みの終わりを告げる予鈴が聞こえて、二人は名残惜しげに口を離したのだった。
「教室、そろそろ戻んねェとな」
不破が呟くと、犬塚は小さく頷いた。そして、こちらの制服の裾をきゅっと握ってくる。もっと一緒にいたい――そんな目をしながら、
「あの、先輩。放課後って……空いてたりしますか?」
控えめに尋ねられた。相変わらず上目づかいをしてくるものだから、堪らない気持ちになってしまう。
本音を言えば、このまま授業なんてサボってしまいたい。けれども、真面目な犬塚の手前、不破は素直に了承の意を伝えたのだった。
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