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reach11

 バタン。  勢いよく開いた扉の向こうに待ち構えていたのは凜一人だった。 「光樹はどーした?」  俺は肩を竦めて見せる。 「あんたとヤるまでもないって。俺と逃げるって決心してくれたよ」 「へえ? お前なんかと?」  なんか呼ばわりだ。  言っとくがお前と言葉を交わして数時間しか経ってないぞ。 「けど簡単に逃がしてなんかくれないだろ」 「ああ。あいつには五億の価値がある」 「……やっす」  小声で云ったつもりだったが、凜は眉間にシワを寄せて睨み付けてきた。 「ところで凜さん雨は好きか?」 「は?」  凜がこいつ頭大丈夫かという顔をする。 「嫌いだが」 「光樹は雨男が好みなんだってよ」  言い切る瞬間に目の前まで来ていた凜の首に手を回しガツンと頭突きを食らわす。  間隙与えずにふらついた足元を蹴り払い、肩を思いきり押し退ける。  凜は反撃することもなく倒れた。  片膝突いてすぐに身を立て直すが、頭痛を押さえるように米神を押さえている。 「やっぱね。喧嘩慣れしてる奴って、なんでか殴る蹴るしかねえからこういうのに対応できないよな」 「石頭がふざけやがって……」 「その石頭な雨男にやられたんだよ」  俺は震える心を知らぬフリして凜に止めを差した。  まあ、二・三発だ。 「應治っ?」 「手、貸せ。光樹」 「えっ」 「走って逃げるぞ」 「ナニソレ、原始的」  光樹が笑いながら手をとる。 「せめて映画的とか言えよ……」  階段を駆け降りる。  凜に恐らく別室待機を命じられていた連中が焦って出てくる頃、俺たちは建物から遠く離れた川辺にいた。 「はぁっ、はぁっ……應治どうやって凜に勝ったの……?」 「がっ、あぁっ……はぁ、原始的、に」 「くっ……ははははっ。なぁるほど」  コロコロ鈴がなるみたいに笑うもんだ。  俺が腰を下ろすと光樹もすぐにそばに座った。 「簡単だったろ? 案ずるよりも産むが易しってな」 「うん。さすがは俺の王子サマ」 「光栄だよ」  まだ現実味ないけどな。  今朝の拉致といいこの景色といい。  雨が弱まった河原は霧がかり、幻想的な淡さを秘めていた。 「光樹」 「ん?」

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