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第12話

体力バカには付き合いきれない。 すっかりグロッキーになって、意識を取り戻すと明け方になっていた。 「リツ.....ごめん、最後だと思ったら、歯止めきかなくなっちゃって」 矢倉は頭を下げ、俺をバスタオルで巻いて抱きしめたまま離そうとはしない。 「.....ヤリ逃げかよ」 最後、最後と繰り返されうっとおしいなと思い睨みつけると、矢倉は目を見開く。 「リツ.....」 「大体な、甲子園いけなくたって......オマエ、プロになんだろ?」 まだ、胸の中はモヤモヤして熱が燻っている。 試してみれば、その意味が分かるかと思っていたのに、少ししか引かない。 意味なんか分かっている。最後にしたくなんかない。 「でも、リツとは.....もうバッテリーできねえ」 ギュッと抱きつかれたまま鼻をぐすりと啜られて、俺は軽くため息をつく。 俺もヤキが回ったな。 こんな脳みそ野球しかねえ筋肉バカが可愛くて仕方がないとか。 「最後とか勝手に決めんな。大学行って、そっからプロ目指す。少し遅くなっけど.....待ってろよ」 「え.....」 矢倉の目が大きく見開かれて、俺を見返す。 「それとな、最後なんて許さねぇからな。責任取って付き合えよ。調子乗ってアナウンサーとか口説いたら、マジでぶち殺す」 そう告げた俺の体を、矢倉は強く頷いて折れるくらいに抱きしめた。 夢の一つは終わりを告げた。 だけど、置き去りにした夢の続きを、新たな決意に変えると俺は誓いを矢倉の耳に吹き込んだ。

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