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第24話 藍に乱点(14)

 何がだめなんだろう? でも、独りごとみたいな言い方に口を挟むのも失礼な気がして、僕は黙ってフローリングの床に転がっていた。  そういえばこの間も進路で悩んでるっぽいこと言ってたし、顔よし頭よし性格よしでパーフェクトな先輩でも自分にダメ出ししたくなることがあるんだろう。逆に、なんでもパーフェクトだからこそ、小さな失点も気になってしまうのかもしれない。  そんなことを考えて、ふと頭を上げると、先輩はぼんやりした顔で僕を見ていた。  何か言わなきゃいけない。  そんな気がして、僕は起き上がって正座した。前は全開、羽織っただけの浴衣がまとわりついた。  そのとき、なんでそんなことを言い出したのか、自分でもわからない。ただ、先輩には少しでいいから元気になってほしかったし、くるくるされるのは結構楽しかったから、単純に直結させて、そう言ったんだと思う。 「先輩。先輩もくるくるしませんか?」 「したじゃない、二回」  先輩は不思議そうな顔をした。 「先輩が、くるくるされるんです」  僕は立ち上がって藍色の浴衣を脱ぐ。座ったままの先輩に差し出すと、一瞬微妙そうな顔をしたが、黙って受け取とり、簡単に畳んだ浴衣を床に置いて、ちらりと僕を見た。 「脱いだほうがいい?」  着ている黄色いTシャツの端を軽くめくりあげて見せる。 「どっちでもいいですよ」  トランクス一枚の僕に笑顔で言われて、立ち上がった先輩はTシャツもジーンズも脱いだ。……今日の先輩はおしゃれな感じのボクサーパンツだった。  先輩は浴衣に袖を通し、少し考えたあと、高い位置で帯を巻きつけた。帯の上端が胸のすぐ下にくるような感じだ。藍色の男っぽい浴衣なのに、それだけでなんだか女の子っぽくなる。それから、僕がさっきやったように、余った帯の端を帯の間に押し込んで、そこが後ろになるようにぐるっと回した。 「さあ、手籠めにしてもらいましょうか、お代官様」  準備を終えた先輩はベッドに座り、ぼけっと立ってる僕を軽く睨んだ。 「先輩、なんか、怒ってます?」  今度はご機嫌ななめ? くるくるされるの楽しいのになあ。 「別に。ただ、パンツ一丁でスタンバってる悪代官に村娘がドン引きしてるだけ」  言われてみれば、そうかもしれない。 「……着ましょうか」  机の上の制服に手を伸ばしたのを、「そのままでいいから」と先輩は慌てたように止めた。  三〇センチくらい離れてベッドに座り、ちらりと先輩を見る。  なんか緊張してきた。だって俯いてる先輩の横顔って、ちょっときれいで、本物の女の子みたいだし。

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