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第5話

 それでも俺はッ 「お前がこの国にいてくれる」  いてくれるから……  俺が嫁入りすれば、この国を守れる。  お前のいる国を。  お前を守れるから。 「だからッ」 「考え直しては頂けませんか」  欠けた月。  今夜は欠けている。十三夜。 「……違う」  声にならない声は、駆け抜けた風にさらわれた。  違うんだ。  そんなお前を望んだんじゃない。  俺はお前にそんな事……  ただ、抱きしめてほしかった。  この気持ちごと包んで……  想いに触れてほしかった。  そうしたら、きっとこの先もずっと。  お前を守る事ができる。  もう触れられなくても。  もう会えなくても。  大切なものは、俺の手から奪われていく。でも、心までは奪えない。 「あなたがそのようなお考えならば仕方がありません」  ハッとして見上げた。  マントの波に飲まれて顧みた彼の背中には、柔らかな十三夜の光が灯っていた。

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