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第11話 黒い翼の従者と、お后様♪
「ランハート!」
気づけば声を荒げていた。後に続く言葉を考える余裕もなく。
「……ランハート」
もう一度、名前を呼ぶ。
たぶん、もう、お前を呼ぶのも最後……
ここには居られない。
一緒に居られないよ、もう……
「お前は、王を……」
もう、一緒に居られない。
お前は軍部を。
国を掌握したと言った。
国の頂点に立つための最大の障害は、国王だ。
国王が君臨する限り、お前は王にはなれない。
だからッ!
「父上を」
一緒には居られない。
でも俺は、どうすれば?
「アイル様、落ち着いて下さい」
伸ばされた手を振り切る。すがるような手を拒絶して、僅かに胸が痛んだけど、それだけの事をしたのはお前だ。
「アイル様!」
首を振る。とにかく、ここを離れなければ。お前から離れなければ。
じゃないと、俺がおかしくなる。
「お待ち下さいませ」
だが。
俺の前に立ち塞がったのは彼ではない。
(黒い翼の……)
彼の従者。
「どうか、お話を聞いて頂けませんでしょうか」
湖の水滴を一滴、溶かしたかのような、澄んだ色の……けれど底の知れない青い目に僅か一瞬。
見入られた刹那。
それは息を吐く数秒。
体が動くのを忘れてしまった。
「良かった。それではお話を聞いて頂けますね。お后様」
「エエエェェエエーッ!!」
なんでッ
「俺がお后様ァァ〜〜???」
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