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第12話

 ななな、なんでェェ〜??? 「陛下の妻におなりになられるのですから、お后様です」 「うっ」  間違っていない。  しかし、俺は王子なのだ。 「私が王と仰ぐのは、ランハート陛下ただお一人。殿下はお后様でいらっしゃいます。よろしいですね」 「……はい」  と、答えるしかない。ここまで言われては。 「ご納得頂きまして、感謝申し上げます」  ……納得はしてないけどね。  俺、王子だし。 「失礼ながら、お后様は勘違いしておいでです。私は陛下の忠実なる下僕。陛下のお心を煩わせる事は致しません。引いては、お后様を悲しませるような真似も。お后様が悲しまれますと、陛下も悲しまれますので」  跪き、深々と頭を下げた彼の長髪が床に垂れる。 「お后様のお父上は無事です。配下の者が安全な場所にお連れいたしましたので、ご安心を」  良かった。ほっと息をつく。 「けれど、さっき首って……」 「それは、あなたの婚約者の事ですよ」 「えっ……」 「いえ。元婚約者と申し上げた方がいいですね」  あなたを娶り、弄んで嬲ろうとした者と、あなたを子に娶らせて、この国の政権に関与して領国拡大を謀った者。 「隣国の軍事的超大国の王と、皇太子の首ですよ」  フフ……と華麗に笑う。  満ちる寸前の割れた月が、透明な光を地上に降らせた。

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