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第18話 勇者と魔王
でも……
「あなたは」
「ランハート!俺はお前を憎んだりしない。お前をもう、殺したりしない!だって」
「アイル様」
「わっ」
気づくと大きな腕に包まれている。
ぎゅぅと……ぎゅうっと。
もう離さない。
そう、胸の奥深く訴えているようで。熱い鼓動の高鳴りが聞こえる。
だって……
「ランハートは俺の大切な人だよ」
だから……
「失いたくない」
だから、ぎゅっと。
「手を繋ぐんだ」
もう離れないように。大切なものは手放しちゃいけない。
「私は夢を見ているのでしょうか」
「えっ、どうして?」
「こんなふうに思って頂いているとは、考えてもみませんでした」
「どうしてっ?」
困惑して、けれど口許に浮かんだ微笑みは柔らかくて。
「あなたは千年前に私を殺しているんですよ」
「それは勇者だからで、でも俺はもう勇者じゃない」
勇者の生まれ変わりって言われても、いまいちピンと来ないけど。
「そうでしたね。あなたに過去の記憶はない。けれど、先程のあなたについ私は……」
フゥっと小さく息を吐いた。
「愛し合っていたあなたを重ねてしまったのです」
俺と、ランハートが?
「でも、お前は魔王で」
俺は魔王を倒した勇者。
そう言ったのは、お前だよ。
「かつて、魔王と勇者は愛し合っていたのですよ」
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