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第19話

 そう……  はるか昔。  魔王は勇者と出逢った。  勇者は魔王と知らずに出逢った。  二人は恋に落ちた。  互いが憎むべき存在だと、勇者は知らずに。魔王は知っていて……  魔王と勇者は、幸せな恋人になった。 「しかし、それを良しとしない天の御使い……あなた方が天使と呼ぶ存在に、我々は謀られ、人心の誤った憎悪が私達二人を引き裂きました。 魔王だと知っても尚、あなたは私を愛してくれた。そんなあなただから、どうしても私はあなたを救いたかった。あなただけを助けたかったのです」  だから…… 「私は世界を敵にまわして、あなたの大切なものすら壊して、あなたの憎しみを私に向けました」 「そんなッ」  そんなのッ 「そう、もうお分かりですね。あなたは私を討ち滅ぼした。討ち滅ぼすべく道を作ったのは、この私、天と地に君臨する魔王です。 世界を敵にまわし、あなたを敵にまわす事で、ようやく私の願いは叶いました」  あなたの命を、この手で守りたい。 「たった一つ……魔王たる私がこの世の神にさえ祈った願いを、あなたは叶えてくれたんですよ」  だから、どうか……  長い指が、そっと目頭を撫でた。 「泣かないで下さい。Mein Schatz(マイン シャッツ=私の愛しい人)」

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