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第20話

 それにね…… 「私は、あなたが思うほど善良ではありません」 「そんな事ない!」  ハッとして、彼の指が触れた顔を上げた。 「ランハートはいつも俺のそばにいてくれたじゃないか」  Ωの王子。  偏見と差別、蔑みの目で、王室でも異質な存在だと常にさらされていた俺の唯一の味方だった。 「忘れましたか?あなたがΩとなった原因を作ったのは、私ですよ」 「それは……」  魔王の呪い。  勇者の血筋を根絶やしにするため、魔王は勇者から生殖能力を奪った。  勇者の生まれ変わりである俺もΩ……  魔王の呪いを受けた身にほかならない。 「けれど、呪いも今夜で終わります」 「えっ」 「だって、これは呪いではないのですから」  頬は大きな手の中に包まれた。  満ちた月の淡い光を瞳は浮かべている。 「魔王と勇者は愛し合っていたのです。愛するあなたに呪いをかける筈がありません」 「でも、俺の……」  それ以上は言わないで、と。  指先が唇に触れた。 「あなたには生殖能力がないのではありません。いえ、正確には雄の生殖能力がないだけです。何の問題もありません」  ……ランハート?  まるで言葉の意味が分からない。  何の問題も……って★  問題おおありじゃないか?  そんな疑問ですらも月の光に解けていく。  柔らかに注いだ彼の瞳の中に。 「あなたは私が生涯でただひとり、愛した人だから……」  すっと目を細めた。 「魔王の力で、雌の生殖能力を与えたのですよ」  Ωを種付けできるのは、αだけ…… 「私は第二性がαです。あなたを孕ませられる唯一の雄ですよ」 「エエエェェエエーッ!!」  おおお、おっ 「俺っがっ」  にににっ、に〜 「妊娠!」 「気が早いですよ、アイル様。性行為前です。元気な精子、たくさん差し上げますので孕んで下さいね♪」 「ヒィィィィ〜!!」 「良いお返事です♪」  俺、お返事してない!

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