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第21話 魔王の呪い
ヒトは雌雄の区別しかない生き物だ。
しかし魔族は雌雄以外に、もう一つの性別を持っている。
性器による雌雄の区別を第1性。
もう一つの性別 α、β、Ωを第2性と呼んでいる。
βは第1性通りの生殖の役割を担う。
これに対して、Ωは第1性に関わらず、精子を受け取り妊娠する生殖の役割を担う。
つまり、第1性が雄で第2性がΩの場合、雄の性器はあるが精子は持たず、ほかの雄から精子を受け取って、雄だけど妊娠するんだ。
これに対して、αはΩとは真逆。
精子を供給する側の役割となり、一回の射精で排出される精子量は、βの2〜3倍である。
また能力に関しても、βやΩを遥かに凌駕する。
人口比率は数%であるにも関わらず、魔族の支配層は、ほぼαである。
優れた資質で、β、Ωを支配するのである。
魔王であるランハートもα。
そして……
「アウィンもαです」
αのみの持つカリスマ性。
αとは生まれついての支配者といえよう。
「最初にヒトには2つの性別しかない、と言いましたが、実はヒトも第2性を持っています。ただヒトにαやΩは生まれない。故に第2性の存在そのものを知らないのです。全てヒトはβですので」
「じゃあ、俺は?」
どうしてΩなんだろう。
「あなたは特別ですよ」
その手がすぅっと頬を撫でた。
「勇者だったあなたはβでした。私があなたを愛したから……」
指先が唇に触れた。
「あなたをΩにしたのです」
ランハートが……
魔王が勇者をΩに……
「これは呪いじゃありませんよ」
春風のような吐息が、そっと耳元に吹いた。
「フフ……お耳、赤くなってしまいましたね」
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