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第24話

 ……うぅん、それはちょっと違う。  手を伸ばす。 「俺は勇者だから」  天井。  その間にいる、お前 「ランハートがほしい」  指先が頬に触れた。 「俺がお前を手に入れたい」  手の平で頬を包む。あたたかい。ランハートは魔王だって言うけれど、幼い頃、手を繋いでくれた……あの日の温もりと同じ匂いがした。  夕暮れの冷たい風から暖めてくれた、春の陽だまりのような優しい手。  大きな手が俺を王城まで連れて行ってくれた。  城が俺の家だったんじゃない。  ランハートのいる場所が、俺の帰る家だったんだ。  ねぇ……  お前がもしも、俺のものになったら、お前はもう二度と悲しい死を選ばずに済むのかなぁ?  だって、お前は俺のものだから。 「お前の命も俺のものだよ」 「アイル様……」  唇が声にならない吐息を落とした。 「だめ、かなぁ?」  恐る恐る口を開いた。  ランハートは答えない。何も言わずにただ、俺を見つめている。  月光のように淡いシラーのかかった眼差しで見下ろしている。 「勇者様を我がものにしようとする想いの方が、おこがましかったのかも知れませんね」  頬を包んだ俺の手に、大きな手が重なった。 「我が心は千年前から、あなた様のものです」

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