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第28話 ラ・カンパネラ
音色は奏でる。
月のさやけき光が降り注ぐ部屋に、ハープの音が落ちてくる。
月から零れ落ちた光のように。
鐘のロンドが鳴る。
「悪魔が奏でると云われているこの曲は、私達魔族が婚姻する時に演奏します」
「結婚……」
「そう。魂を奪われると云われる曲で、互いの魂を奪い、二人の魂が二度と離れる事のないように……結ばれるように、と」
『鐘のロンド』
「琴の鳴らす鐘のもとで、愛を誓うのです」
これは政略結婚。
ランハートは言った。
けれど、政略結婚が必ずしも不幸せだとは限らない。
「フフ……キスの時は目を瞑るものですよ」
「あっ」
小さく息を飲んだ。
トクンッ
心臓が高鳴る。
(キスされる事も気づかなかった)
俺、キスされるんだ……
今までまの、おでことか首筋とは違う。
だって、これは俺達が想いを通じ合わせた証で、これからもずっと、ずーっとら想いが通じ合うように。
願いを込めたキスだから。
百年後も、二百年後も、千年先まで。
ずっと、ずっと、ずーっと、俺達が一緒にいられますように。
「大丈夫。私はあなたを千年前の過去から見つけ出しましたよ」
「そうだな」
正直、愛が何なのか。愛し合うのが、どうする事なのか、よく分からない。
でも、お前を大切に思っている。
きっと愛の始まりだ。
離れたくないって思う。
大切なものは……
きゅっ
手を繋いで。
俺達は誓いの口づけを交わした。
ラ・カンパネラ
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